自然学習・研究機能調査検討会
最終報告書

平成14年10月

はじめに

最終更新日:2003/03/01


はじめに

 21世紀を迎え、経済的な発展の過程で失われたふるさとの自然との関係を再構築する必要が叫ばれています。私たちをとりまく自然環境の成り立ちや仕組みについて学習し、研究を深めていくこと、そして未来にそれらの自然遺産を受け継いでいくことは、その第1歩と考えます。

 私たちのふるさと静岡県は、世界的にみても実に多様性に富んだ豊かな自然環境に恵まれています。静岡県のさまざまな自然環境やそこに生きる生物の多様な営みを学習しその成り立ちを理解することは、自然観を深め、郷土愛や誇りを育む上でも欠かせません。また、洪水や地震・火山噴火などに対する防災問題や地球温暖化などの地球規模の環境問題に対しても、静岡県の自然の動向を長期的視野にたって正確にとらえることにより、重要な貢献ができるものと考えます。静岡県をとりまく自然の豊かさ、もろさ、危うさについて体系的に調べ、その知識を県民が共有する必要があります。

 住みやすい社会づくりや地域の環境改善に取り組むためにも、また自然を楽しみその豊かさを次代に継承していく人づくりの観点からも、自然を学習し研究するための機能(自然学習・研究機能)が県下に整備されている必要があります。いまや自然環境をめぐる話題は、学校教育から生涯学習の対象としても需要や関心の高いテーマといえます。

 県内には静岡県の自然環境の実態を伝える上で重要な標本・資料が数多くの篤学者によって蓄積されています。しかしながら、県下にはそれらを継続的に収集・保管し研究・教育に活用するための機関や施設がなく、それらの大半は散逸の危機に直面しています。自然開発等で失われた生息地の情報は二度と入手することはできません。このままでは、静岡県の貴重な自然遺産は、県民が知る機会もなく永久に失われてしまうかもしれません。また地球規模での環境変化も危惧されている現在においては、自然環境の動向を長期的にモニターできる資料を蓄積し続ける必要もあります。

 身近な地域の自然環境の調査・研究活動や自然体験学習の実践は、いまや一部専門家や教育機関だけでなく、各種NPO等の活動を通しても大きな広がりを見せ始めています。静岡県の自然財産を散逸させることなく、県民による、県民のための「自然学習・研究機能」を発展させるためにどのような政策が求められているのでしょうか。

 このような社会状況の中、広く県民に対する自然学習・研究機能を総合的に推進する拠点として、自然系博物館の果たすべき役割は大きいものであると期待されています。

 この検討委員会は、自然史の研究者に限らず、学校教育や社会教育、あるいは母親の立場や情報技術者など、県民や県外の様々な立場を代表する者で構成されました。それらのさまざまな立場や観点から、平成13年度から1年間半かけて、自然学習・研究機能とはどういうことか、なぜ今自然系博物館が必要なのか、それはどんな博物館であるべきなのかについて議論を重ねてきました。

 9回の検討会と平行して、県民の自然系博物館に対するニーズや学校教育と博物館との関連についてのアンケートの実施、他地域の博物館施設の視察、そして各分科会とメーリングリストでは委員間の熱心な議論が展開されてきました。その成果として、自然系博物館に対する県民ニーズの把握と整理、さらにそれを踏まえて求められる自然学習・研究機能およびその拠点整備等に関して、ここに提案を行います。

平成14年10月
自然学習・研究機能調査検討会


 ●目次
 ●はじめに
 ●第1章 持続可能な未来を拓く基本的な考え方
 ●第2章 自然学習・研究のあり方
 ●第3章 自然学習・研究の拠点施設のあり方
 ●第4章 自然系博物館の整備について

付録 検討資料等
 資料
  1 自然学習・研究機能検討会の目的と検討経緯

  調査報告書
    自然系博物館に関する県民アンケート調査報告書 (別冊)
    学校教育と博物館に関するアンケート調査報告書 (別冊)


 

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登録日:2003年3月1日