動物骨格標本の新しい作製方法とその実習

横山 謙二

最終更新日:2007年9月20日



 小型の動物の骨格標本を作製するときには、標本を煮たり、肉を腐らせたり、またカツオブシムシに肉を食べてもらったりと、いろいろと手間がかかり、その割りに小さな骨がバラバラになり、骨格を組み立てることにとても苦労していました。

 写真のカエルの骨格標本は、ここで紹介する方法で作製したものです。この方法はとても簡単で、さらに安価に、そしてきれいに骨格を組み立てることができます。この骨格標本作製法は、東海大学海洋学部海洋科学科2年生の佐々木彰央君が独自に編み出しました。詳しくは別の機会に佐々木君からしてもらいますが、今回はその方法の簡単な紹介と、10月に開催した骨格標本作製実習について報告します。

 この方法は、まず動物の死骸から皮や肉を剥ぎとることから始まります。皮を剥ぎ取ったら、つぎに眼球を取り除き、骨に付着している肉と筋肉を取り除きます。おおかた取り除ける肉をとったら、第一頸椎と頭骨の隙間から虫ピンで脳をかきだし、肉と脳を取り除きます。関節部にまだ肉が残っている状態で、市販の食器漂白剤のワイドハイターを20〜30%に薄めた水溶液に、死骸を浸します。1〜3週間後、標本の動物によってさまざまですが、漬けっぱなしでなく、ときどき見て肉をとったりするときれいな標本ができます。

 ワイドハイターで細かい肉が解け、まだ骨と骨がつながっている状態で、標本を水溶液から取り出します。取り出した標本を楊枝や針、櫛などで発泡スチロールの板に望みの姿勢にして固定します。標本は乾燥したら完成です。この方法では、溶けきらなかった骨についた最後の薄い肉が、乾燥することで接着剤の役割を果たして、骨がばらばらになりません。そのため、バラバラになった骨を後から部位をそろえて針金や接着剤などで骨をつなぐ必要がありません。

 この骨格標本作製実習は、10月25日(水)の夕方に静岡県自然学習保存室で行いました。実習参加者は、おもに東海大学と静岡大学の学生とNPOの会員10名ほどで、講師は骨格標本作製法を編み出した佐々木彰央君にお願いしました。参加した学生たちの中には、ほとんど解剖をやったことがない学生もいましたが、大学では習うことのできない骨の勉強のために、熱心に取り組み、不器用ながらも何とか解剖していました。

 その晩のうちには、標本を解剖して肉をある程度取り去り、ワイドハイターの水溶液に漬けるところまでしかできませんでした。しかし、その後個人的に保存室に何度か来て、みんな標本を完成させることができました。


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登録日:2007年9月20日


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