京都大学総合博物館見学記

佐々木 彰央

最終更新日:2007年9月20日



 2006年11月1日、京都はほのかに紅葉しはじめ、修学旅行生で混み合う市内を私はバスで30分かけ京都大学総合博物館へと向かいました。

 展示フロアは広々とした設計になっており、海外遠征関連資料系、自然史系、技術史系、文化史系の4つのテーマにそって展示されています。入ってすぐに霊長類研究所の紹介と実験設備の説明があり、その奥には静岡県浜松市で発掘されたナウマン像の下顎が展示されていました。

 さらにその奥にはカモシカの全身骨格など、哺乳類の形態についての展示や昆虫類の標本、植物標本、熱帯雨林のジオラマなどが展示されていました。技術史系では機械の歴史が滑車を用いて紹介され、文化史系では縄文土器などが展示されていました。

 次にスタッフの方に博物館研究室まで通していただき、博物館助手の本川さんと院生の方々にお会いしました。そこで、博物館の成り立ちについてお聞きしたので少し紹介しようと思います。京都大学総合博物館は2001年に開館しました。元々、京都大学の関連施設には動植物の標本から考古学資料まで、貴重な標本が多数分散され保管されていました。

 それを収集及びデータ整理し、今後の研究の進展と、学術標本の保全、生涯学習の支援を目的として創設されたのです。よって、幅広い分野の資料が集まっているため、自然史系の研究室だけでも魚類学の専門家から植物学の専門家まで幅広く在籍していました。よって、ただ保管・展示するだけでなく研究活動を広い分野にわたって行っているのです。

 一通り話を聞かせていただいた後、収蔵室を見学させていただきました。収蔵室がある廊下には「窒素ガス注意」と書かれた張り紙があり、本川さんが院生の方に「非常口分かるよね?」と聞きました。これには驚かされ、少しヒヤリとしました。窒素ガスは標本の劣化を防ぐために時折噴射するそうです。そして、その廊下を通り標本室の扉を開けると、目の前には鯨類の全身骨格標本が横たわっており、横の棚には大量の剥製と骨格標本が並んでいました。剥製は軟骨魚類のラブカとホホジロザメ、単孔類のカモノハシ、アマミノクロウサギなど数多くの標本が保管されていました。全身骨格標本はオオサンショウウオ、カエル類、ヘビ類、ウシ、エゾカワウソ、ウサギ類などが保管されていました。その殆どはかなりの年月が経っており、100年前の骨格標本が多数保管されていたのです。これらの標本は特別展示の時などに一般公開されるそうです。

 

 今回、総合博物館の表側と裏側を見学させていただき、博物館が健全に機能するには標本が劣化することなく保存できる施設での収蔵。また来館者が学習しやすい展示方法及び館内設計。さらにスタッフが常日頃から学問を研究するという姿勢が必要だと感じました。

 京都大学総合博物館の方々には貴重な標本を数多く見させていただき、感謝しています。


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登録日:2007年9月20日


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