静岡県の三角点(8) 南アルプス南縁の一等三角点 輿石 邦昭 |
南アルプスは、長野、山梨、静岡の3県にまたがる一大山脈で、静岡県内では日本第4の高峰、間ノ岳(3,189m)から南方に末広がりに連なる山系を形成している。東縁の白根山脈は山伏(やんぶし、2,014m)で分岐して、一方は大井川左岸に沿って志太平野に、もう一方は安倍峠から十枚山(1,726m)を経て安倍川左岸沿いに竜爪山地から静岡平野に至る。西縁の赤石山脈は光岳(2,591m)付近で分岐し、中央構造線沿いに湖西連峰と寸又川、大井川沿いに八高山山地につながる。一等三角点は南アルプス南縁に位置する竜爪山地の文殊岳(1,041m)と八高山地の八高山(832m)にある(図)。 文殊岳は薬師岳と共に双耳峰を成す竜爪山の一峰である。静岡駅の北方12kmに位置し、山頂へは国道1号線中之郷交差点から県道201号(通称、竜爪街道)を北上し、平山バス停先約3kmの穂積神社鳥居より登りはじめる。長尾川沿いの登山道には約1,000万年前の静岡層群の砂泥互層および砂岩層が露出する。約60分で穂積神社に至る。スギの巨木の間を抜けて鉄製の階段を急登すると稜線上にでる。そこから左方へ100mほど行けば薬師岳(1,051m)の頂上に至る。 ここまでは穂積神社から60分ほどである。鉄製の階段付近は約1,500万年前の竜爪層群の火成岩が静岡層群と南北方向の断層線で接し、この断層線は登山道を横切っている。薬師岳から約15分、植林帯を下って自然林の中を登り返せば、竜爪山一等三角点の標石が埋設されている山頂にでる。山頂からは、駿河湾、今なお隆起している有度山と静岡平野が一望でき、沖積平野に浮かぶ谷津山や八幡山が島のように見える。穂積神社に戻って西里方面へ林道を50分ほど下ると、竜爪層群と静岡層群を境する断層の露頭を見ることができる。 八高山は大井川鉄道、福用駅の西北西約3kmに位置する。福用駅が登山口で、スギとヒノキの生えた尾根を90分ほどで4林道の交差点である馬王平にでる。さらにスギ林を約40分で白光神社に着き、山頂まではここから10分である。山頂からは、南アルプスや富士山まで眺望でき、眼下には大井川の鵜山の七曲り、古大井川の曲流跡が一目できる。南方の小笠山丘陵も美しい。帰路、家山の河跡湖である「野守の池」では側方侵食による急崖や古大井川の曲流が切断されて残された天王山台地が眺められ、福用駅の南の龍門の谷では約7,000万年前の砂泥互層の横臥褶曲(県指定天然記念物)を見ることもできる。 |
自然史しずおか第14号の目次 自然史しずおかのindexにもどる Homeにもどる 登録日:2007年9月20日 NPO 静岡県自然史博物館ネットワーク spmnh.jp Network for Shizuoka Prefecture Museum of Natural History |