静岡県の三角点(7)
中央構造線沿いの一等三角点

輿石 邦昭


最終更新日:2007年9月20日



 日本列島の西半分を南北に分ける大断層である中央構造線は、長野県諏訪湖の南から南下して、静岡県北西部の青崩峠から県内に入り佐久間を通り、さらに愛知県の豊川から三河湾を通って渥美半島の伊良湖岬から西方に転じて、紀伊半島、四国を横断して九州に抜けている。この断層を境に北側は片麻岩や花崗岩からなる領家帯が、また南側は結晶片岩からなる三波川帯、火山岩や貫入岩からなる御荷鉾(みかぶ)帯、頁岩や砂岩からなる秩父帯が帯状に分布している。3つの一等三角点はこの構造線の南側に沿って、北から白倉山(1027.1m)、富幕山(563.2m)、神石山(324.7m)にある(図)。

1)白倉山は、秋葉ダムの北西6.5kmの旧龍山村と旧佐久間町の境界に位置する。国道152号線の旧龍山村役場から白倉川沿いに県道361号線を進み、「もみじの里 白倉峡」の看板の先1.2kmを右折して、さらに2.2kmほど林道に入るとT字路となる。ここを左折して約1.3km行ったところが白倉山の登山口である。天竜杉の美林の中、40分ほどで稜線に至り、右へ急登すれば約10分で白倉山の山頂にでる。山頂からの眺望はきかないので、東方約5分のところの遠州灘展望ポイントがよい。天竜川の両岸に広がる磐田原や三方原の台地、浜名湖が遠望できる。帰路の白倉峡では、川底の小石から周囲の巨岩まで、三波川変成岩の色合や褶曲模様などさまざまな岩石の表情を楽しめる。北方約32kmの青崩峠では、領家帯のホルンフェルスが見られる。ここには、5299一等水準点標石(標高1082.4634m)もある。

2)富幕山(とんまくやま)は、天竜浜名湖鉄道三ヶ日駅の北東約6kmの旧三ヶ日町と旧引佐町、愛知県新城市との境界に位置する。臨済宗方広寺の大本山がある奥山高原を登りつめたところが奥浜名自然遊歩道奥山コースの入口で、稜線を徒歩50分ほどで富巻山(とんまきやま)一等三角点の標石が埋設された山頂にでる。山頂からは遠州灘や浜名湖が眺望できる。帰路、竜ヵ岩鍾乳洞や付近の自然の造形カレンフェルトを楽しむのもよい。竜ヶ石山(359m)へは、竜ヵ岩洞の入口近くにある林道の2km先の登山口から約20分である。また、三ヶ日原人が出土したという只木遺跡やワニやナウマンゾウなどが発掘された谷下の石灰岩採掘跡に佇むと「カルシウムはカルシウムを護る」ということが実感できるだろう。

3)神石山は、浜名湖の西、湖西連峰の一主峰で、湖西市と豊橋市の境界に位置する。東海道線新所原駅の北方約1.5kmの新池が登山口である。15分ほどで梅田峠に至り、嵩山展望台では、三方原の台地、浜名湖の今切口、旧天竜川の氾濫原であった天伯原の台地、小河川の入り組んだ沖積平野が一望できる。過去30万年にさかのぼって台地や浜名湖の成り立ちを思い描きながら眺めていると興味が尽きない。梅田峠からはヤブツバキが繁る尾根を50分ほどで神石山の山頂にでる。東面が開いているので浜名湖が望見できる。帰路、嵩山北西0.6kmの神座のトキワマンサクの群生地を訪れるとよい。日本では熊本県小岱山(しょうだいさん)と三重県伊勢神宮とここの3ヶ所しか発見されてないという珍しいものである。尚、県道334号線沿いのトキワマンサク見学者駐車場に案内板がある。


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登録日:2007年9月20日


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