施設見学と自然観察会報告
竜洋町昆虫自然観察公園と桶ヶ谷沼

大貫 貴清

最終更新日:2007年9月20日



 3月13日(日)、晴天のもと、日本野鳥の会静岡支部との共催で竜洋町昆虫自然観察公園と桶ヶ谷沼見学会を実施しました。参加者は18名でした。

 まず、竜洋町昆虫自然観察公園に現地集合し、施設の見学を行ないました。竜洋町昆虫自然観察公園はJR磐田駅と豊田駅の中間付近の田園地帯の中にあります。この施設では、西ゾーン、北ゾーン、中央ゾーンの3つに分かれています。西ゾーンには遊具広場と昆虫採集エリアがあり、子供たちが自由に遊んだり、昆虫採集を楽しんだりする事が出来ます。北ゾーンには芝生広場が広がっています。また、カブトムシ観察舎では夏季にはカブトムシやクワガタムシの発生を観察する事が出来ます。その他にも野鳥観察舎、水中観察窓等があり野鳥や水生生物の観察ができるようになっています。中央ゾーンには水路が引かれておりホタルやカワニナ、メダカを観察することが出来ます。また蝶の吸蜜植物を中心に植えられた花壇、小学校の理科の教科書に登場する植物が植えられた学校ゾーンなどから成り、その他に屋内施設として昆虫館があり世界や国内の様々な昆虫標本や生きた昆虫を観察することが出来ます。

 この日はスタッフの原木さんの説明があり、そのあと園内を廻りました。原木さんの説明では、この場所はかつてゴミの処分場であった所に昆虫を観察できるような施設を作り、通常、昆虫館というとはじめから自然の豊かな場所を切り開いて(ある意味では生息場所を破壊して)作るのに対しこの昆虫館では何もないゼロからの出発であるとのことでしたが、現在では数多くの昆虫が観察できるようになったとの事で、その中にはキイトトンボやムラサキツバメといった県内では比較的稀な種も出現するようです。

 当日は冬の昆虫観察会というイベントも行なわれていたため、数組の親子連れと共に園内を廻りました。当日は途中で雪が降るほどの寒さのせいか、表で活動する昆虫は非常に少なかったですが、落ち葉や土をふるいにかけ原木さんより手渡された虫眼鏡で観察すると、ゴミムシやトビムシ等の昆虫の他、ジムカデやヤスデといった多足類、冬眠中のアマガエルなども現れ、子供たちだけでなく付き添いの親御さんや、私たち大人も夢中になって観察していました。また、園内の樹木をよく観察すると至るところにハラビロカマキリの卵塊やイラガの繭など春に向けて出番を待つ昆虫たちを見つけることが出来ました。寒さの残る季節においてもこのように様々な昆虫を観察することができる事から、暖かくなってからは非常に多くの昆虫たちが活動し、賑やかになることでしょう。

 屋外で昆虫を探したあとは昆虫館で、県内では稀になってしまったタガメやゲンゴロウなどの水生昆虫や、世界各国のカブトムシやクワガタムシの生態展示の他、国内外の昆虫標本を見学しました。ただ展示するだけでなく樹木のモニュメントの上部に様々な昆虫が付いており懐中電灯を使って探したり、コノハムシやカレハカマキリ等の擬態する昆虫を実際の木の葉や枯葉の中から探すといった趣向を凝らした展示もありました。個人的には世界の珍奇な昆虫や美麗な蝶の展示の中に、日本産の微小なゲンゴロウやゴミムシの仲間といった一般の目に付かないような昆虫も多く展示されているところに好感が持てました。

 午後からは途中ちらちらと雪の降る中場所を移動し、桶ヶ谷沼ビジターセンターの見学を行ないました。桶ヶ谷沼ビジターセンターはベッコウトンボをはじめとしたトンボ類の生息地として有名な桶ヶ谷沼のほとりに平成16年4月にオープンした施設で、ログハウス調の建物の中には桶ヶ谷沼に生息する魚類やトンボ類の成体およびヤゴの抜け殻の標本、鳥類の写真などが展示されており、訪れる人達に桶ヶ谷沼の情報を分かりやすく伝えられるようになっています。
当日はまず、細田昭博センター長より桶ヶ谷沼におけるベッコウトンボの現状などについての話を伺いました。細田センター長は長年にわたり桶ヶ谷沼のトンボの調査を行なってこられて来たそうですが、近年ではベッコウトンボを含むトンボ類の多くが減少傾向にあるらしく、池自体で羽化する数は極少なくなっているとのことでした。

 話を伺ったあとは実際に沼に出向き野鳥などの観察を行ないました。木道の途中では何やら猛禽が飛んでいるのが見えましたが、私は鳥は専門外なのでトビか何かだろうと思って気にも止めていませんでしたが、そこはさすが野鳥の会、飛んでいる状態でも見事に種を同定されていました。どうやらハイイロチュウヒという割と珍しい鳥だったようです。その後観察小屋からは沼に浮かぶカモの観察をしました。私はオナガガモ、マガモ、カルガモ、キンクロハジロ程度しか分かりませんでしたが、皆さん慣れていらっしゃって、どんどん色々な種類を見つけては教えてくださいます。そのうちトモエガモという非常に稀なカモを見つけられた方がいて、私も初めて目にしました。顔に巴模様のような模様のあるこのカモ、この桶ヶ谷沼以外では非常に稀な存在らしいのですが、桶ヶ谷沼では少数が毎年越冬しているとの事でした。

 観察終了後には再びビジターセンターに戻り、細田センター長よりストローや紙コップなどを使った竹トンボや、蝉の鳴き声や蛙の鳴き声そっくりな音が出せる楽器などの玩具の作り方について講習を受けました。どの玩具も非常に簡単なつくりですが、とてもよく出来ており、紙製の竹トンボなどは僅かな力でも真上に向かって強力に上昇していき、皆さんも童心に帰って飛ばしておりました。

 この日1日で2箇所の自然観察のための施設を巡った訳ですが、昆虫自然観察公園では昆虫に直に触れてみる、桶ヶ谷沼ではトンボや鳥を含んだフィールド全体を観察する、といった感じで違った特色があり、どちらの施設も多くの人達が訪れ熱心に展示などに見入っておられました。機会がありましたら是非足を運んで頂きたいと思いました。

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登録日:2007年9月20日


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