静岡県の植物(3)
高山性リンドウの色々

宮崎一夫 
(遠州自然研究会)

最終更新日:2007年9月20日



 静岡県の高山に生息しているリンドウ科の植物には、ミヤマアケボノソウ、ヒメセンブリ、サンプクリンドウ、オノエリリンドウ、アカイシリンドウ、トウヤクリンドウ、コヒナリンドウ、オヤマリンドウの8種があります。そのうち、「改訂・日本の絶滅のおそれがある野生生物 植物編(以下,国RDB)」と「まもりたい静岡県の野生生物 植物編(以下,県RDB)」に掲載されている種は表の通りです。

 これらのうち、ミヤマアケボノソウとオヤマリンドウだけが両RDBに掲載されていません。ミヤマアケボノソウは、常に湧き水が流れている付近に生息しています。南アルプスで湧き水が出ているところは少ないので、自ずとミヤマアケボノソウが見られる機会も少なく「県RDB」に加えたい気もします。その凛々しい花姿は湧き水で喉を潤している時に登山の苦労を癒してくれます。それに比べて、南アルプスに8月の下旬ころ登ると、オヤマリンドウは草地に、トウヤクリンドウは岩礫地に多く見られます。このオヤマリンドウは、北海道から四国まで分布しています。そして南アルプスでも全域に分布しています。

 一方のトウヤクリンドウも、北海道から本州の中部地方にまで分布していて、やはり南アルプスの全域に分布しています。しかし、トウヤクリンドウは「県RDB」に注目しなければならない種としてのカテゴリーで掲載されています。その理由は、本州の中部地方というその分布の南限が本県にあたるからです。生育している最南の地しては光岳で見ています。先に記したミヤマアケボノソウも南アルプスが南限ですが、最南の地は長野県側に位置する池口岳です。南限に自生する植物の記録は、将来における地球の指標となるかもしれません。

 これらの花は、ふつう表に示した色をしていますが、色の白い株もあり、白花品の存在が図鑑に記載されている種もあります。その白花を近年、南アルプスで視認したのでその種を○で表に記しました。また同じ種でも草丈の高い低いが観察される種があるので、定性的ではありますが、高さの幅を表に記しました。

 ミヤマアケボノソウは白花品もあると記載されていますが、見たことがありません。そして草の高さは、同じ生育場所でも株によって高低の幅が広いです。ヒメセンブリは高山性のリンドウの仲間では一番遅い時期に花が開く種で、数株しか見ていませんが、白花品もなく、株による高さにそれほどばらつきはありません。サンプクリンドウはしばしば白花も混じって見られます(写真)。そして高さのばらつきもあります。オノエリンドウは数株の白花を得ました(写真)。そして高さのばらつきもありました。

 アカイシリンドウはまばらに単生して真っ直ぐに立ち上がり、白株を見たことはありませんが、高さのばらつきがあります。コヒナリンドウは、一番早い時期に花が開き、数株しか見ていませんが矮小で高さのばらつきがありません。オヤマリンドウは、株立ちして白花もごく稀に見られ、高低の幅が広いです。

 このように白花株が存在する種は、草丈の高低の幅も広いように感じています。花の色が変化に富む種は、成長面でも環境の相違に対応する能力が高いのではないかと思って山を降りました。

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登録日:2007年9月20日


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