コレクション紹介(2)

伊藤二郎氏の植物標本

杉野 孝雄


最終更新日:2004年6月26日



ソナレセンブリ サワトラノオ トキワマンサク

  自然学習資料保存事業で、静岡県の寄贈標本第1号となったコレクションです。伊藤二郎氏は静岡大学名誉教授、NPO自然博ネットの理事で、本会の前身であった、静岡県自然史博物館設立推進協議会の代表です。

 標本の保存状態は良好で、「牧野新日本植物図鑑」に従い標本番号を付し、分類順に整理され、1点ずつ台紙に貼ってあるので、整理と受け入れ作業は容易に行うことができました。また、自然学習資料保存事業を行うに当たってのモデルとされたコレクションです。

 コレクションの内容は、1992年以降に採取された標本がほとんどで、総数は3085点、そのほとんどは種子植物標本で2792点、その他、シダ植物標本204点、コケ植物・藻類・地衣類標本89点となっています。産地別では、静岡県内で採取された標本が2635点、県外標本440点、それに、若干の産地不明標本があります。

 絶滅種は含まれていませんが貴重種としては、絶滅危惧IA類のソナレセンブリ、絶滅危惧IB類のヒキノカサ、トキワマンサク、サワトラノオ、ミズネコノオ、絶滅危惧U類のミズニラ、セツブンソウ、イワタカンアオイ、マツノハマンネングサ、キスミレ、オオアブノメ、スズメハコベ、ウラギク、イズドコロなどがあります。

 静岡県に分布する植物は「静岡県植物誌」(1984)にまとめられていますが、その中に記載されていない標本では、アツミゲシ(1993)、コタネツケバナ(1994)、イリオモテニシキソウ(1994)、ヤクナガイヌムギ(1992)、ミズヒナゲシ(1997)など、外来植物の静岡県内の侵入年代を知ることのできる標本もあります。()内は採取した年。

 一般の種類を万遍なく集めるようにされていたようで、貴重種の種類は少ないですが、貴重種ばかりを集めることに熱心で、植物研究の本質からはずれた収集が多い中で、本筋に従ったコレクションといえます。

 近年、生物学の進歩でDNA分析などが盛んに行われていて、普通種の産地別の多数の標本も必要となっています。また、普通種の中にも絶滅危惧に向かっている植物もあります。普通種も含めた、同一種の各地の植物を標本として保存することが求められています。

 静岡県の寄贈標本となった、伊藤二郎氏のコレクションは生物学研究の資料として、広く活用されることが期待されます。


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登録日:2004年6月26日


NPO 静岡県自然史博物館ネットワーク
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