今年度の事業展開について
−浜名湖花博出展標本の保存事業も含めて−

事務局

最終更新日:2004年6月25日



 昨年度から行われている静岡県による自然学習資料保存事業は今年度まで継続され、本NPOが継続してこの事業を受託して行うことになりました。5月に正式契約が行われ、6月1日から今年度の事業が三島で開始されました。この事業は、自然環境の変遷についての理解と自然との共生をめざした施策のための基礎資料となり、私たちの望む自然史博物館の基礎標本にもなります。

 しかし、この事業は国の雇用対策事業で行われているため、雇用対策事業が終了する今年度限りで終了してしまいます。本NPOではこの事業の継続を県に強く要望していくとともに、本来の問題である自然史博物館設立へ向けての活動をさらに強く推進することが、今年度の重要な活動となります。

 そのためには、県や県民のみなさんに、標本保存事業や自然史博物館設立についての目的と現在の活動を十分に知っていただき、理解と協力を求める活動が重要になると思います。具体的には、県に対する要望書の提出と、8月に三島の資料保存室で「ミニ博物館」を開催するなどの計画があげられています。

 近年、自然環境の重要性は訴えられているものの、自然環境の変遷を知るための具体的な基礎資料となると、実際に静岡県にはほとんどない状況です。たとえば、静岡県の生物分布について最近になって絶滅危惧種や貴重種の調査が行われ、レッドデータブック(RDB)が発行されました。しかし、その調査でさえ対象となった生物標本を保存することがまったく行われていません。

 RDBの標本については、調査者個人で保管している場合が多く、また調査データ自体も含め、このままでは散逸する可能性もあります。これに対して、本NPOではRDBの調査委員会や自然保護室に呼びかけ、標本とデータの緊急的な保存と確保を提案しています。

 2004年4月8日〜10月11日まで開催されるしずおか国際園芸博覧会/第21回全国都市緑化フェア浜名湖花博では、静岡県内の植物も含め、世界または日本全国から数多くの植物が出展されています。植物に関する研究調査では、多くの種の標本が必要であり、この機会に園芸種も含め数多くの植物の標本を保存収集することができれば、静岡県は植物について参照できる大きなコレクションをもつことができます。また、浜名湖花博に出展された協力団体に対して出展された標本を後世に残すという顕彰の意味でも、標本保存事業は重要です。

 このような博覧会の開催後に、「開催しっぱなしで、将来に廃棄物以外何も残さない。」というような批判が聞かれることがあります。浜名湖花博を県の総合計画の中で、学術的にも教育的にも意味ある博覧会としても位置づけ、今後の「人づくり」や「ものづくり」のための県行政の資産として標本を残すことにすれば、そのような批判は聞かれないと思われます。

 1990年に開催された大阪花の万博では、出展されたほぼすべての植物の種類が大阪市立自然史博物館によって標本にされて保存され、その2年後に登録標本目録も公表されました。この例からも、本NPOでは静岡県に対して浜名湖花博に出展された植物の標本づくりを要望してきました。

 花博がすでに開催した4月になり、この要望が具体的な花博の事業として動きだしました。まだ、正式な契約には至っていませんが、県との何回かの打ち合わせののち、すでに標本収集と一次標本作製のための作業が花博会場で始まっています。この事業については本NPOがほとんど受託して行うことになり、これも本年度の大きな事業となりました。

 これらの事業も含め、今年度は静岡県における今後の自然標本の保存と自然史博物館設置推進にあたって、また本NPOの今後の活動にとっても重要な年度となります。会員のみなさんのご協力をよろしくお願いいたします。


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登録日:2004年6月25日

NPO 静岡県自然史博物館ネットワーク
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