自然学習・研究機能調査検討会報告 4

学校教育と博物館に関するアンケート調査概要

発行:2002/09/10



 自然学習・研究機能調査検討会では、自然学習・研究の拠点施設としての自然系博物館の必要性やあり方についての検討の参考とするため、県内の小・中・高・養・盲・聾学校、総計1,046校にアンケートを行いました。調査は平成14年6月4日〜25日に行い、教頭先生または教務主任の先生に回答をお願いしました。有効回答数は1,008(96.4%)で、県立自然系博物館の開設や博物館の内容・学校との連携に関する意見や要望も多数寄せられました。自然学習・研究機能調査検討会でその暫定的な調査概要がまとまりましたので、いくつか抜粋して掲載させていただきます。

1 学校における博物館利用の現状

 昨年度1年間で博物館を見学したことのある学校は、全体の72.5%に達している。学校区分別では養護学校が93.1%、小学校が87.7%と博物館の利用率が高い。また、見学したことのある学校の平均見学回数でも、養護学校が5.4回、小学校が3.1回と高い回数利用している。

 学校教育の一環で利用された博物館は、全体で276施設にのぼった。このうち、利用数の多い博物館は「地域の郷土博物館」、国立科学博物館、登呂博物館、浜松科学館、浜松市博物館である。

 博物館見学の目的は、「教科学習等(校外学習・体験学習・総合的な学習等を含む)の一環として」と、「遠足や修学旅行など学校・学年行事として」の利用がほとんどであり、この2つを同時に選択する学校が多数あった。

 35%の学校が博物館を定期的に利用している。学校別では小学校と養護学校の割合が高い。
・博物館までの交通手段としては、公共交通機関がもっとも多く、ついで貸し切りバス、徒歩・自転車の順となっている。利用施設までの片道時間については、30分〜1時間がもっとも多い。
・利用施設での滞在時間は「1時間〜1時間30分」、「30分〜1時間」の順で多く、全体的に短時間の利用が目立つ。

 今後、学校教育での博物館見学の機会をはっきりと増やしたいと考えている学校は半数以上で、小学校では6割以上で、高校では3割以下だった。

 博物館見学の機会を増やせない理由の8割が「学習の目的や内容に対応する施設が近くにない」ということで、その他に「カリキュラムに余裕がなく時間がとれない」、「交通費などの経費負担の問題」の回答率が高い。

 学校教育の立場から一般的な博物館の問題点や不満については、「展示の構成が学校での学習内容に対応してない」の回答率が55.7%ともっとも高く、回答なしの比率が高かった。また、「児童・生徒を引きつける魅力に乏しい」と「トイレの数や食事のスペースなど団体利用に対する配慮が足りない」がこれにつづいた。

2 学校教育の立場から自然系博物館に期待すること

 どのような場として自然系博物館を利用したいかという問いに対して、「人と自然との関わりや自然との共生の大切さを学ぶ場」と「学校週5日制導入に伴う児童・生徒の自然体験や生活体験の場」の回答率がそれぞれ6割を超えている。これに続き「地球環境全体の視点から地域の環境問題を考えることができる場」、「自然保護や生物の多様性など生態系の大切さを学ぶ場」、「静岡県の自然について学ぶ場」の回答率が高い。

 県立自然系博物館における資料の収集・展示や調査研究などの対象領域(テーマ)としては、「地域性のある個別テーマ(富士山、駿河湾、南アルプス、浜名湖、伊豆半島)」の回答率がもっとも高く、ついで「多様で豊かな県全体の自然を総合的に網羅したテーマ」、「地域性のある個別テーマを複数結びつける」がつづいている。

 資料収集・展示や調査研究などに際して、主にどんな分野に力を入れてほしいかという点については、「自然環境や生態系などに関する分野」と「環境問題や自然保護に関する分野」がそれぞれ7割を超え、環境というキーワードが学校教育でも注目されている状況が伺える。また、東海地震への関心からか「地震や地殻変動に関する分野」がついで多く、「動物に関する分野」と「植物に関する分野」がつづいている。

 児童・生徒を引率して見学の場合、資料の展示方法としては、どのような点に重点をおいてほしいかという問いに対しては、「児童・生徒が自ら参加体験できるような展示を設けて欲しい」、「手で触れたり動かせる展示を多くして欲しい」の回答率が高い。

 児童・生徒を引率して施設面ではどのような機能や設備が必要かという問いに対しては、「児童・生徒が楽しみながら学べる多様な体験学習室」の回答率が9割を超え、体験的な学習の要望が強く、このほか「教師や児童・生徒からの質問・問い合わせなどに答える相談コーナー」「映像ライブラリーや図書館などの資料・情報スペース」への要望が高く、調べ学習に対応した施設が求められている。

 学校教育との関連で実施して欲しい事業については、「野外観察会や標本づくりなど各種講座や体験学習会の開催」「児童・生徒や教師が参加できる調査研究やワークショップ」の回答率が高く、体験的な事業への要望が強い。このほか、「学芸員を講師として学校に派遣」「インターネットなどを使った来館しなくても展示や事業の概要がわかるような情報システムの整備」などへの要望も高い。

 自然系博物館が開館した場合、児童・生徒を引率して見学したいかという問いには、「ぜひ見学したい」「できれば見学したい」の回答率の合計が75.7%にのぼり、県立の自然系博物館が開館した場合、学校教育での活用希望は非常に大きい。また、「あまり見学したくない」「見学したくない」の回答率の合計は0.3%に過ぎない。

 自然系博物館の立地場所との関係で見学希望を聞いたところ、片道所要時間で「30分以内」と「60分以内」の合計が78.6%にのぼり、学校から1時間圏内の設置が望まれている。

 自然系博物館の利用形態では、「学年単位での利用」が全体の66.9%を占めている。「学年単位での利用」における利用人数は平均51.5人となっている。「グループ単位での利用」は7.2%であるが、総合的な学習での活用希望が伺える。

 自然系博物館の利用頻度では、「年に1回程度利用したい」が41.6%ともっとも多く、ついで「在学中に1回程度は利用したい」が22.3%となっている。

 学校教育と自然系博物館との連携のあり方については、「積極的な連携を図ることが望ましい」または「必要に応じて連携を図ることが望ましい」と答えた割合は93.6%にのぼった。

 連携の内容については、「博物館から学校への各種情報提供」が72.4%、「博物館見学に必要な事前事後の連絡調整機能や教師へのサポート体制の充実」が60.6%と連携内容としては学校教育側がやや消極的な回答が多かった。



通信25号の目次へ

 top へもどる

登録日:2002年9月10日