コラム「しずおかの自然」

ヨコグラノキ

長島 昭・福田 寿

発行:2002/09/10



萩間小学校中庭のヨコグラノキ
萩間小学校中庭のヨコグラノキ

  
ヨコグラノキの花(萩間小学校中庭)  ヨコグラノキの実(女神山山頂神社境内)




 ヨコグラノキを初めて見たのは昭和40年頃の地学巡検で相良町の石灰岩でできている女神山に行った時、後藤二三雄氏宅の門口にあった県指定天然記念物の「ヨコグラノキ」であった(その後この指定木は枯れてしまった)。この木は石灰岩地帯にだけ育つ特殊な植物なのだそうである。次にヨコグラノキを見たのは相良高校の校舎が完成した頃に、校庭にこの木が移植された時であった(しかし、この木も活着しなかった)。その後、静岡県地学会(編)「えんそくの地学」の現地確認のために女神山麓の後藤氏宅を訪ねた時、「うちのおじいさんが屋敷内の道端近くにヨコグラノキの木を植えた」と聞き、登山道脇に数本生えているのを確認した。昨年6月、再び後藤氏宅を訪ねた時、「花はいつ咲くかわからないが、実は赤らんでいて旧盆頃に落ちる」と聞いた。そこで、さっそく7月8日にヨコグラノキの実を見に行った。また、相良町菅谷の富田松夫氏から「萩間小学校にヨコグラノキがある」と聞いていたので、8月17日に行ってみると、学校の中庭には赤く熟した実が木の根元に落ちていた。

 植物図鑑などを調べてみると、詳しく記載されてないものが多く、週刊朝日百科(朝日新聞社)の「植物の世界」には下記のような説明だけがあった。
ヨコグラノキ
 宮城県以南の日本と朝鮮半島、中国にまれに見られる落葉高木である。クマヤナギ属にいれる見解もあるが、托葉が離生し、果実核が1室である点が異なるので別属とする。高知県の横倉山で発見され、石灰岩地を好んで生える。宮城県白石市には「ヨコグラノキ北限地帯」の名で天然記念物になっているところがある。

 また、原色日本植物図鑑大木編-1(北村四郎・村田 源,1977)(保育社)には次のような説明と葉、幹などの図はあったが、花の図はなかった。
ヨコグラノキ クロウメモドキ科 クマヤナギ属
 山地に生える直立小高木。枝は赤褐色を帯び無毛。葉は長楕円形、鋭先頭、全縁またはやや波となり、膜質、長さ6~13 cm、幅3~5 cm、上面無毛。下面は粉白色を帯び、脈腋付近はわずかに毛が散生する。側脈は斜上し7~10対。葉柄は6~10 mm。
 花序は枝先または上部の葉脈から出て長さ1~5 cm、無毛。小花柄は長さ1~2 mm。無毛。花は6月、径約3 mm。がく片は三角形、鋭頭、長さ1.2 mm、花弁は楕円形で、がく片より短い。雄ずいは5個、花糸は短い。果実は長楕円形、長さ7~8 mm、黄色から赤色を経て暗赤色となる。(分布)暖帯、本州、四国、九州、朝鮮(南部)、中国。

 このような経緯で、浜岡在住の福田氏とヨコグラノキの花を見ようと計画し、5月初めから監視したところ、本年5月26日、ヨコグラノキの花の撮影に成功した。
 現在、萩間小学校には3本のヨコグラノキが移植されており、中庭のものは花も実もなっていた。機会があったら見に行って下さい。



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登録日:2002年9月10日