カラーコラム 13 |
静岡県の哺乳類(5) ヒナコウモリ 三宅 隆 県内100年以上ぶりの記録 静岡県内でのヒナコウモリの記録は、鳥居春巳氏著「静岡県の哺乳類」1989年、第一法規発行によると、野部村(現豊岡村)や富士山須走などで捕獲されているものの、いずれも1889年〜1891年の古いものであると記載されている。 私を含めた静岡県自然環境調査委員会哺乳類部会員は、1998年から5年間、静岡県版レッドデータブック作成の為に、精力的に現地調査を実施したが、何しろコウモリの捕獲は難しく、ついにその生息は確認できなかった。そして、静岡のレッドリストでは、ヒナコウモリは、要注目種のN-V(部会注目種 各専門部会において、学術上・自然保護上注目すべきと判断された種)にリストされ、今後の確認に任されることとなった。そして、静岡県版レッドデータブックは2004年3月に発刊された。 ところが、実はその1年前の2003年4月11日に、富士宮市麓の朝霧高原にある、東京農業大学富士畜産農場の富士山寮で、窓ガラスにへばりついていたヒナコウモリが、学生により発見されていたのである。このことを、知ったのは、ずっと後のことだったため、残念ながら記載できなかったのだが、実に112年ぶりの確認であった。 一度確認されると、偶然は続くものらしい。翌2005年8月27日、静岡市井川の県民の森で、ウサギコウモリの行動調査をしていた、日本大学の学生のカスミ網にかかったのである。情報をもらいすぐに現地に駆けつけ、私にとってはヒナコウモリとの初めての対面となった。 そして、2006年3月5日、当会会員でもある足立さんから、焼津の花沢の里で、コウモリの死体を拾ったという情報がもたらされた。冷凍を頼んで、後日確認したところ、これがヒナコウモリだったのである。まだ、飛び回るには寒いこの時期に、どうしてこんな所にいたのか判らないことだらけではあるが、この個体は、将来の県立自然史博物館の為の資料として、剥製にして保存したいと考えている。 県内では、今までに14種類のコウモリが確認されているが、まだまだ確認されていないコウモリも多い。今後とも地道な調査を継続し、この次は、県内では1886年に豊岡村で記録のあったチチブコウモリに、ぜひ出会いたいものである。 静岡県の淡水生物(6) ホトケドジョウ 足立 京子 静岡県のホトケドジョウは、静岡県版レッドデータブックでは絶滅危惧U類に指定されています。(西部は絶滅危惧U類、中部、東部は絶滅危惧TA類。伊豆では絶滅となっています。) ホトケドジョウを水槽飼育した体験のある方は、簡単に増えると言います。では、なぜ絶滅が危惧されるようになってしまったのか考えてみますと、まず、ホトケドジョウが生息する条件としては、針葉樹林だけの山ではなく、広葉樹の落ち葉などが堆積し吸水性を持つ豊かな土を持つ山からの湧水かしみだし水があることが一番大切です。その岸には隠れ場所となる草や古いコンクリートの割れ目などの空間があり、川底にはやわらかな泥と落ち葉もある程度必要です。こんな条件の整ったところにたくさんいる印象を受けます。 さらに、細い流れという条件が加わると生息場所は、かなり限定されてしまいます。それを考えるとホトケドジョウがいるということのすばらしさが分かってきます。 しかしながら、このような生息環境は、崩れやすくヒトが汚いと感じるようです。真っ先に河川改修の対象となります。ホトケドジョウが安心して棲める環境が無くなったことが絶滅危惧種になってしまった理由です。 ホトケドジョウのいるような河川の改修には充分な配慮をしていただきたいと思います。 |
自然史しずおか第13号の目次 自然史しずおかのindexにもどる Homeにもどる 登録日:2007年1月3日 NPO 静岡県自然史博物館ネットワーク spmnh.jp Network for Shizuoka Prefecture Museum of Natural History |