静岡県の三角点(6)
伊豆半島の一等三角点

輿石 邦昭

最終更新日:2007年9月20日



 伊豆半島は、200〜100万年前頃、はるか南からプレートに乗って移動してきた海底火山群が日本列島に衝突・隆起して生まれた火山半島である。3つの一等三角点は、その後、更新世(100〜15万年前)になって、陸上に噴火した万三郎岳(1406m)と達磨山(982m)、暗沢山(520m)にある。

 1)万三郎岳は半島の中東部、天城山脈の最高峰である。国道136号線の修善寺横瀬で狩野川を渡り、県道12号線から112と111号線を通って天城高原ゴルフ場に向かうと、ここの四辻に万三郎岳への登山口がある。国有林の中、ヤマハンノキやイヌツゲ、サラサドウダンなどなどの名札を見ながら、アセビ林を抜けると1時間ほどで万二郎岳(1299m)に着く。ここからは西の縦走路に入り、アセビ自然林のトンネルを抜けるとブナ林となり、さらにアマギシャクナゲ群落の中を急登すれば万城岳一等三角点の標石が埋設されている万三郎岳にでる。山頂からの眺めはそれほどよくはないが、少し開けた北北西に富士山が見える。復路はシャクナゲコースが現在閉鎖されているので、往路を戻ることになるが、余裕があれば西南西約1.5kmにある天城側火山のカワゴ平(約3000年前に噴火した)を往復するとよい。この付近のブナ・ヒメシャラの群落は、植生遷移上珍しいものとして、植物群落保護林に指定されている。苔むした溶岩とそれらの間に生える樹木の中、20分ほどで火口跡に至り、その辺ではマメザクラが見られる。

 2)達磨山は半島の北西部、達磨山地の最高峰である。国道136号線の修善寺から県道18号線で戸田峠に至り、ここからはよく整備された伊豆山稜線歩道を登ると、1時間ほどで達磨山一等三角点のある山頂に着く。山頂付近はミヤマクマザサが生い茂る美しいササ原で、360度の展望が楽しめる。北〜西方には宝永山の火口をエクボにした富士山や内浦湾から御前崎までの海岸線が、さらに遠くには南アルプスが見られ、東方には天城山などの眺めが素晴しい。また、馬蹄形カルデラを通して見える御浜岬の砂嘴を堤防にした戸田港も美しい。復路戸田峠へ戻ったら、往復30分程度なので北の金冠山(標高816m)に行くとよい。ここの山頂から見る海抜0mから聳え立つ富士の姿と内浦の海岸は絵画的である。帰路、戸田の御浜岬では、駿河湾側の大きな円礫と戸田港側の砂浜のコントラストが面白い。駿河湾深海生物館ではシーラカンスのように生きた化石といわれる古代ザメ「ラブカ」の標本も見られる。また、砂嘴が閉じて淡水化した海跡湖である井田の「明神池」や国の天然記念物であるビャクシン群落の見事な古木がある大瀬崎の砂嘴を見るのもよい。

 3)暗沢山は半島の西南部、蛇石火山がつくる高原に突き出ている。国道136号線が南伊豆町に入る手前から東方の狭い道に2.4kmほど入り、ササユリの里天神原植物園のバス停から林道の約1km先のY字路を右に100m行くと長者ヶ原山ツツジ公園で、ここが蛇石山への登り口である。約15分で大峠(おおとうげ、標高470m)にでる。峠を示す標識はないが、石地蔵が行き来する人を今もやさしく見守っている。峠の東斜面から車道にでて約15分で岩科村一等三角点の標石が埋設されている暗沢山に着く。北側が開けているので、富士山や南アルプスが遠望でき、眼下に展開する松崎港や堂ヶ島の風景が美しい。帰路は大峠まで戻り、西へ5分ほど先の山ツツジやササユリなどの群生地であるカヤトの南斜面につけられた歩道を下る。松崎町の北約10kmの宇久須の海食崖からなる黄金崎に寄道するのもよい。伊豆半島が誕生する前に、海底火山物質の堆積によってできた湯ヶ島層群の褶曲した地層や熱水変質を受けてできた白黄褐色の変朽安山岩(プロピライト)は美しく、1000万年前の太古の海に思いをはせるといつまで見ていても見飽きない。


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登録日:2007年9月20日


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