静岡県の三角点(4)
三方原台地と磐田原台地の一等三角点

輿石 邦昭

最終更新日:2007年9月20日




 静岡県西部の大河、天竜川の右岸には三方原台地が、左岸には磐田原台地が広がっている。これらの台地は更新世の終りごろ古天竜川の氾濫原であった。三方原台地には「都田村」(みやこだむら、85.9m)と「神ヶ谷」(かみがや、37.2m)、磐田原台地には「上野巳新田」(うわのみしんでん、33.4m)の一等三角点がある(図)。都田村(北端点)と神ヶ谷(南端点)は、三方原基線となっている。既知の2点を結ぶ一辺とその両角から他点を確定することを三角測量と云い、この既知の一辺を基線と呼んでいる。地形図の作成にあたって、三角測量による累積誤差を少なくするために、基線は国内に約200kmの間隔で14ヶ所設けられている。最初の基線観測は明治15年に相模野基線(神奈川県)で行われ、三方原基線は明治16年に観測された2番目の基線である。基線は伸縮の少ない基準尺(長さ数メートルの物差し)などを用いて直接測定されるが、三方原基線は数十回繰り返し測定された結果、10839.9757mとされた。他の基線長が2.5〜6kmであるのに対して、三方原基線は長いので、当時の観測の苦労が偲ばれる。

 「都田村」の標石は、浜松環状線(県道65号線)の赤松坂交差点から都田テクノ方面に向かい、赤松林と三方原用排水路沿いに約3.3km直進し、前原南交差点を右折、更に1.3kmほど直進すると左手に都田浄水場があり、ここに隣接する静岡県柑橘試験場落葉果樹分場との境界のイヌマキの生垣沿いにつけられた作業道路際の1mほどの盛土上に埋設されている。この付近の土壌が赤〜黄褐色化しているのは三方原礫層上部の風化赤土である。全国からこの一等三角点を見学に多くの人が来場するとのことである。果樹圃場ではナシ、カキ、モモ、キウイフルーツなどの優れた品種が栽培されており、技術開発などの情報提供を行っているので、是非見学することを勧める。

 「神ケ谷」の標石は、先の赤松坂交差点を右折し、東名浜松西ICから約1.5kmの伊左地町交差点を左折、県道48号線(舘山寺鹿谷線)を1.6kmほど進んだ西山町交差点を右折、800mほど直進した右側のコンビニエンスストアーの駐車場の一隅に埋設されている。ここの標石は鉄柵で囲まれているので触れることはできない。原野に佇む標石を思い描きたいが、時の流れを感じる一瞬である。帰路は、蜆塚の縄文遺跡や浜松の博物館に立ち寄るのもよいだろう。

 「上野巳新田」はJR東海道線磐田駅の北西約2km、国道1号線沿いの京見塚公園にある。この公園には弥生時代中期〜古墳時代後期の墳墓が復元されており、三角点の標石は古墳時代中期の円墳(径約50m)の頂上に埋設されている。京見塚公園へは、磐田警察署西交差点から三つ目の角を左折して、さらに右折すれば公園駐車場にでる。磐田原台地は南に約1.1%の傾斜を持ち、大小の谷によって南北方向に侵食されている。国道1号線は磐田原を東西に横断しているので、道路の上り下りで台地の開析状況が実感できる。円墳頂上からは天竜川の沖積平野を遠望でき、沖積平野に立てば、天竜川の側方侵食による急崖が見られる。国道1号線の沿いの北側には、ベッコウトンボの生育として知られる桶ヶ谷沼があるので、ここで自然観察を楽しむのもよいだろう。

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登録日:2007年9月20日


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