コレクション紹介(1)

田邊 積氏の掛川の化石


柴 正博

最終更新日:2004年5月19日



モミジツキヒガイなどの化石群集 オニフジツボの化石

 田邊 積氏は袋井市に在住で、本NPOの会員でもあります。田邊さんは、約20年間にわたり掛川層群の化石を採集し、多くの貴重な標本を所有されています。今回、県の標本収集保管事業に協力いただき、約5,000点の化石標本の受入れ作業が現在進んでいます。

 掛川市の特に市街北側の丘陵は、今から約200万年ほど前に浅海や沖合いの海底で堆積した砂層や泥層からできていて、そこにはしばしば貝化石がたくさん含まれます。この地層は掛川層群と呼ばれ、古くから多くの地質学者が掛川層群の地層や化石研究してきました。そして、世界的な地層の対比にも日本の代表として掛川層群やその化石の研究が参照されています。

 田邊さんが採集を続けてこられたこの20年間には、掛川市のいたるところで造成工事や道路工事が行われ、丘陵は造成地として消滅し、道路の壁面はコンクリートや植生で覆われてしまいました。そのため、現在では掛川市で化石採集をする場所がほとんどない状態です。

 田邊さんは、この20年間、休みの日には必ず掛川に出かけ、いくつかの露頭を回り化石採集を続けてこられました。そして、化石を採集して家に帰ると、化石のクリーニングやその整理にほとんどの余暇を費やされました。

 田邊さんの20年間の努力は、この20年間に消失した掛川市に存在していた多くの化石の記録をとどめることになりました。その精力的な化石採集によって、どんな地質学者や古生物学者も収集していない貴重で膨大なコレクションが保存されることになりました。田邊さんの標本は、いわゆる掛川動物群で代表される温暖浅海性の貝化石だけではなく、いろいろな場所や堆積環境の地層から採集されているので、その種類がとても多いのが特徴です。

 田邊さん自身語っています。「最初は単なる趣味のひとつとして始めたことでしたが、続けている間に多くの友人ができ、励まされ、また多くの化石の先生とも知り合いになり、化石についていろいろと勉強をすることができました。化石採集を続けていて、本当によかったと思います。」と。そして、田邊さんは、採集された膨大な標本を、研究資料としてはもちろんですが、子供たちの教育資料としてもっと活用しようとご自身でも活動を行っています。

 そのひとつとして、今年の夏(7月22日〜31日)に、12,600点の化石を展示する「静岡県の化石展」を袋井市役所市民ギャラリーで開催されます。これには本NPOも共催しますので、ぜひご覧ください。



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登録日:2004年5月19日


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