ヤマトイワナは高山の源流付近の冷水を生息域とするアメマス類のうちの１地方群（亜種）で、本州の相模川以西から紀伊半島にかけて分布する日本特産の魚です。 山岳の渓流という不安定な食物条件の下で生活するため、水生昆虫や陸生昆虫からヘビなどの小動物さえ捕食する広食性を示しますが、釣り味や食味が好まれ、釣人がこの魚を狙い山の奥深くまで遡行します。 静岡県では、大河川である天竜川や大井川水系の中流部より上流の本・支流の源流部で見られます。大河川の一つ富士川の県内側には生息地はありません。狩野川、興津川、安倍川など中小河川でもあちこちで見つかるようになりましたが、いずれも、近年に移植されたもので、異亜種に属するニッコウイワナです。水産資源の増殖の目的で、漁協や釣り人によりヤマトイワナの生息域にも放流されてきました。 昨年まで実施してきた静岡県版レッドデータブックのための調査で、天竜川や大井川では、ニッコウイワナはすでに大部分の河川の奥まで入り込んでいることがわかり、ヤマトイワナに絶滅の危険が迫っている（絶滅危惧Ｉ類Ｂ）ことがわかりました。 サケの回遊ルートがない静岡県の川に購入したサケの稚魚を放して、エコロジカルな活動をしたと報道するテレビ局もまだあるようですが、良識ある方々は、オオクチバスのみならずこういった外来魚を放つ行為が、多くの在来魚を絶滅の危機に追いやっていることに気づいてほしいものです。 |
