静岡県の鳥(1)
県の鳥 サンコウチョウ

文:三宅 隆 写真:飯塚久志

最終更新日:2003年7月5日




 「ツキ ヒ ホシ ポイ ポイ ポイ」森の奥から朗らかな声が聞こえてきます。そっと近寄ると、枝から、尾の長い小鳥がさっと空中に飛び立ち、虫を捕らえて、またもとの枝に戻りました。双眼鏡で見ると、30cmはあろうかと思われる長い尾と、目の周りのコバルトブルーのリングがはっきり見えます。

 これが、1964年、静岡県民の投票により、県の鳥に指定されたサンコウチョウです。サンコウチョウは、5月上旬頃、東南アジアから渡ってくる渡り鳥(夏鳥)です。比較的低山で、沢沿いの薄暗い林に生息し、枝の又部にコップ型の巣を作り、オス、メス協力して子育てするスズメ目カササギヒタキ科の鳥です。英名を「パラダイス フライキャッチャー」つまり「極楽のヒタキ」といわれ、姿も声も美しい鳥です。和名のサンコウチョウはその鳴き声が「月、日、星」の三つの光と聞こえるところから三光鳥とつけられました。

 県内では、県西部の浜名湖西岸から県中部の由井町までの比較的標高の低い地域で連続的に分布し、伊豆半島では、標高の低い海岸部に限られ、半島内部では確認されていません。県東部では、愛鷹山麓から小山町にかけての富士山麓に、低地から標高1,000m以上までの広い地域で、比較的高い密度で生息が確認されています。

 しかし近年、年によって増減はあるものの、以前に比べて見られる地域が減少しているように思われます。県が1994年〜1996年に実施した生息調査でも、その傾向が見られています。野鳥の会でも、近年、丁度サンコウチョウの生息に適した里山地域を通る、第2東名の工事に伴い、見られなくなったり、少なくなったりした場所の報告が多く寄せられています。

 サンコウチョウに限らず、全国的に夏鳥の減少が叫ばれています。越冬地の自然破壊や捕獲圧などが原因の一つと言われていますが、日本での繁殖適地の減少も見逃せません。県鳥でありながら、県民が見られなくなってしまいます。そんな事が起こらないよう願うばかりです。


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登録日:2003年7月5日

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