静岡県の淡水生物(1)
太田川河口の干潟にすむハゼたち

北野 忠(遠州自然研究会)

最終更新日:2003年7月5日

チワラスボ ヒモハゼ
ヒメハゼ エドハゼ
カマヒレマツゲハゼ クチサケハゼ


 福田町に河口がある太田川の下流域には、大規模とは言えませんが良好な干潟があります。今回は、太田川の干潟でみられるハゼの仲間をいくつか紹介したいと思います。

 まず、もっともよく目にするのがヒメハゼです。干潟に住むといっても、やや砂まじりの所がすきで、体も砂に似た模様をしています。このほか、食用となるマハゼやウロハゼもみられ、休日には釣り客でにぎわいます。

 干潟の泥の中にもハゼの仲間はすんでいます。チワラスボは、全長30p近くにもなるハゼで、一見するとウナギのようにもみえます。体は赤褐色で、眼は非常に小さく、おまけにヒゲ状の突起をもち、お世辞にもかわいいとは言えませんが、泳ぎは下手でどことなく愛嬌のあるハゼです。このほか、からだが非常に細長いヒモハゼや、口が大きく、顔つきがサンショウウオのようなエドハゼもみられます。これらはいずれも良好な干潟にしかすめないので、県内での生息地はそれほど多くはありません。言い換えれば、太田川の干潟はこれらの種類が生活できるくらいに良い環境であるといえます。

 夏から秋にかけては南方系のハゼが見つかることもあります。クチサケハゼ、カマヒレマツゲハゼは、これまで沖縄県以南でしか公な記録がありません。写真の個体は昨年の秋に採集したもので、おそらく分布の北限記録になります。今後調査を継続すれば、もっといろんな南方系の魚類がみつかることでしょう。

 太田川では、今回紹介したほかにも、非常に多くのハゼたちをみることができます。しかし、一見良好な環境であるようにみえる太田川の河口域も、少しずつ変化しているようです。川で出会った古老の漁師によれば、30年ほど前と比較して漁獲量はおよそ10分の1になったとのことです。また、以前はトビハゼ(地方名:トビッチョ)がいたようですが、絶滅してしまったと言います。残念ながら、少しずつ環境は悪化しているのかもしれません。

 とは言うものの、太田川は本当に楽しい場所です。干潟に行けば、いろんな生物との出会いがあります。興味のある方は是非足を運んでみてください。でも、その際には、深みにはまったり、泥から抜けなれなくなったりしないよう、くれぐれも事故のないようにお願いします。


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登録日:2003年7月5日


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