博物館の活動レポート

「オープンラボ春祭り」
―神奈川県立生命の星・地球博物館―

及川忠広

発行:2002/09/10



 平成14年4月28日・29日の両日、神奈川県立生命の星・地球博物館において、博物館友の会の主催による「オープンラボ春祭り」が実施された。

 博物館友の会は、各博物館において会員を対象に様々な趣向で活動を展開しているが、地球博物館における運営は、多少なりともユニークな組織運営となっている。

 従来、友の会は館側によって組織され、各種の催事、指導もすべてが学芸員が負う方法が採られていたように思う。しかし、地球博物館友の会では、友の会会員である一般市民の有志が幹事となって各種のグループを組織し、そのグループごとに催事や普及活動をプログラムし、その上での専門的なバックアップを学芸員にお願いする、という方法が採られている。

 地球博物館友の会「オープンラボ」は、そんなグループの中のひとつであり、「開かれた研究室」のネーミングの下、小中学生に自然観察の楽しさ・博物館の楽しさを伝えること、企画を通じてスタッフ自身が学ぶこと、を目的に活動している。そのため、家族でスタッフに参加している会員も多く、最年少スタッフは4歳の女の子である。

 今回の催事では、延べ人数、100名ものスタッフが企画と運営を行った。参加者・受講者は一般の来館者であり、受付登録の必要な講座参加者の集計では2日間で延べ183名となった。
 今回の企画・講座は以下の通りである。

「博物館クイズラリー」……館内展示を見てクイズシートの設問に答える企画。内容は、昆虫テーマを2コース。古生物テーマを1コース。会員の設問を館の学芸員が監修。小学生を中心に、2日間で約60名の参加。参加者は事前登録をすることなく自由参加とした。希望者には解説と講義も。

「昆虫標本を作ろう」……会員があらかじめ用意していたチョウ、甲虫を参加者に展翅してもらい、昆虫標本の基礎を学んでもらうという企画。館の昆虫採集にも参加している会員が担当。ほぼマンツーマンの割り当てで参加者を指導。

 
昆虫標本をつくろう                     プランクトン


「葉脈標本を作ろう」……1日目、22名参加。2日目、18名参加。葉をアルカリ溶液で煮込み、葉肉を落としたのちに葉脈だけを取り出し、染色することによって標本とする企画。ハガキやしおりにもできるようにしたところ、記念のおみやげとする方も多数。植物の仕組みと、木の葉を分解する土壌生物についての話題も提供。2日間続けて参加の方も。

「プランクトンを探そう」……顕微鏡を用い、ミクロの生き物の観察を実施。おなじみのミジンコ、ワムシ、アメーバから、熱にも放射線にも強い不思議な生き物として有名なクマムシも観察。1人に1台、顕微鏡を割り当てることにより、スムーズな指導が可能であった。

「空を飛ぶタネの秘密」……マツやカエデなど、滑空するタネの模型を作り、実際に飛ばす実験を行った。ツル植物であるアルソミトラのタネは航空機のような有翼形状をしており、また滑空の距離も長いことから子供たちに人気となった。

「ダンゴムシレース」……身近にもいるダンゴムシの意外な運動能力(枝に登る、麻ヒモを綱渡りできる)や体の構造、食物などを観察してもらい、紙で作ったコースを舞台にレースをさせる遊びも実施。あわせて、土壌動物たちの話題も提供。ツルグレン装置で土中より採集した生き物も実体顕微鏡で観察。

「砂鉄を集めよう」……地学研究グループによって実施。山中の鉄鉱石と河川下流域の砂鉄の関係、磁鉄鉱などについての解説を行う。同時に磁石を使って、砂の中から砂鉄を集める実験も行う。「地球ってすごい!」と小学生からの感想も寄せられた。

「ギフチョウの観察」……会員が育てている長野原産のギフチョウの羽化の様子を自然状態よりひと月半遅れで公開。冷蔵庫などで温度調整をしながら育てた結果。食草と環境についても話題を提供し、なぜ棲息が危機に陥っているのかも解説。チョウの羽化をリアルタイムで観察できたため、その感動を感想としている参加者も。

 私自身は古生物クイズを担当し、文系出身ながら館の専門家のご意見もうかがいつつ設問を行った。対象が小学生であるため、標本や展示解説を見ればすぐに分かる程度の問題とした。
 催事を知らずに来館した参加者がほとんどだったが、「博物館はこんなこともしているんだ」と驚かれる方も少なくなかった。展示を漫然と眺めるだけでなく、自らも参加して観察や実験の体験ができたことを喜ばれる方が多かった。

 こうしたことから、友の会の幹事スタッフは普及活動ボランティアとしてのポジションも固めつつあり、より館や学芸員との連携によって一般への学習指導の一翼を担うように求められつつある。
 土曜も休みとなった現在の子供たち。友の会活動を通して思うのは、博物館が学習支援やリクレーションの場としての機能も高め、家族で来館する方々へのサービスの能力も併せ持つべきではないか、ということである。知的エンターテイメントによる市民サービス、という考え方も博物館の存在意義ではないかと考える次第だ。



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登録日:2002年9月10日