海外博物館めぐり 5
台湾国立自然科学博物館ほかの見学報告
(National Museum of Natural Science)

発行:2000/06/01

野嶋 宏二
(静岡県地学会)


更新世末期の絶滅象
更新世末期の絶滅象

 静岡県自然系博物館推進協議会では,副代表の池谷仙之氏の案内で台湾への巡検旅行をしました。総勢9名による台湾国立自然科学博物館を主目的とした見学会でした。筆者は,滋賀県立琵琶湖博物館を見学してきたところでしたので,展示内容,展示方法など両博物館のポリシーを比較してみようと考えました。そうすれば静岡県の自然系博物館のあり方を探るための参考になるのではないだろうか。ついでに見学する台中の集集(チーチー)断層とはどのような地震によって生じたのか,また常夏の国の自然はどのようなものなのか,台湾のおいしいものにも出会ってきたい,等々,出かけるにあたっていろいろな期待を持ちました。



(1)日程,見学場所
  3月 24日(日) 19:30 台北空港着
      25日(月) 午 前 故宮博物館見学
             14:30 台北駅発(火車)
             16:58 台中駅着
      26日(火) 午 前 国立自然科学博物館見学
             午 後 集集(チーチー)地震断層見学
      27日(水) 12:00 台北空港出発



(2)台湾国立自然科学博物館見学
 台湾国立自然科学博物館を見学して,あまりにも大きな規模に驚くとともに,疲れ果ててしまいました。台湾国立自然科学博物館を琵琶湖博物館と比較したものを以下のように表にまとめてみました。

静岡県の自然系博物館としては,誰のための博物館とするのか,何をテーマとするのか等,県民のコンセンサスを得ることから始める必要があると痛感しました。

台湾国立自然科学博物館と滋賀県立琵琶湖博物館の比較
(これは筆者の観察視点からまとめたものです)

博物館のテーマ
台湾国立自然科学博物館:中国(台湾と中華人民共和国)の歴史・自然・文化のすべてを展示し,国民の理解を求める。
滋賀県立琵琶湖博物館:琵琶湖の自然と人との関わりをテ−マとして,一般市民が自分の目で理解,学習する。

規 模
台湾国立自然科学博物館:国家的な博物館であり,展示物の内容,量とも充実している。
滋賀県立琵琶湖博物館:琵琶湖がテーマであり,県立として,また見学規模としても適度である。

展示内容
台湾国立自然科学博物館:「科学センター」「生命科学」「地球科学」「中国の科学と技術」の4つのテーマからなる。展示物はレブリカが多いが,コンピューター,マルチメディアを駆使している。
滋賀県立琵琶湖博物館:琵琶湖の「生物,歴史,人と環境」を追求する。「生き物,実物に手を触れる」ことができる。展示内容が充実し,また展示が大変工夫されている。

展示案内
台湾国立自然科学博物館:各展示室を各自で見学していく方式。説明員が少ない。
滋賀県立琵琶湖博物館:各室の展示交流員が熱心に説明してくれる。

学 習
台湾国立自然科学博物館:テーマごとの教室で,博物館員の指導を受けることができ,教育の場として博物館が機能している。
滋賀県立琵琶湖博物館:各展示室で展示交流員のアドバイスを受け,自分で学んでいく場を主としている。

書店,スーペニアショップなど
台湾国立自然科学博物館:規模が大きい。専門書もそろっている。おみやげは外国産のものが多い。
滋賀県立琵琶湖博物館:琵琶湖に関係した本が充実している。食堂にはナマズ,ブラックバスの天丼がある。

場  所
台湾国立自然科学博物館:台中市内(台湾第3番目の60万都市)にあり,広大な面積をもつ。
滋賀県立琵琶湖博物館:琵琶湖の湖畔。自然に恵まれ,展望が良い。

参加者記念撮影  教室での学習風景






(3)台湾集集(チーチー)地震の車籠埔(チェンプ)の地震断層の見学

集集地震:1999年9月21日1時47分 台湾中部で起きたマグニチュード7.6の地震。台湾中南部から北部にかけての広域範囲で死者2,600人,倒壊家屋10万棟という甚大な被害が生じた。断層の長さは80km,断層面上の平均的ずれ4m,地震のモーメントは1995年の阪神・淡路大震災の8倍とされる。

 台中から鉄道で約15分,豊原駅で下車し,そこからタクシーに乗って断層の露頭に到着。最初に,断層が川を横切ったために大甲渓にできた落差8mの滝(写真参照)を見学しました。その景観に目を見張り,地球の地殻変動のなせることの大きさを知らされました。その川に架けられていた橋が補修されて橋の途中から坂になっていました(写真参照)。

 次に,その川の上流の重力式石岡ダムの決壊場所を見学しました。ダムは水門20ゲートのうち,西側の数個が基礎から壊れてしまっていました。断層の落差は,写真から明らかなように,ダムの上面によく現れていました。地元のタクシー運転手たちがとても親切に案内してくれ,「謝謝」でした。

断層によってできた大甲渓  断層によって決壊した石岡ダム



(4)台北市(人口268万人)

 ここではバイクの大集団に驚かされました。信号待ちをしていると100〜200台のバイク軍団がものすごいスピードで通過していきます。ヘルメットをかぶっていないと,500円(日本円でおよそ2,000円)の罰金だとか。
 夜の屋台も圧巻でした。豚の心臓やらアヒルの首などが並んでいます。食文化の違いをまざまざと感じました。



注)編集委員会より:台北では、国宝級の逸品多数を含む70万点以上の収蔵品を擁し、ルーブル(フランス)、メトロポリタン(アメリカ)などとともに世界屈指の博物館といわれる故宮博物院も見学しましたが、その報告は割愛させていただきます。
 


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登録日:2001年6月04日