特集「榛原の自然」 静岡空港とその周辺の植物 |
発行:2000/03/15
杉野孝雄(掛川草の友会)
建設が進められている静岡空港は、牧之原台地の北部にあり、標高は200mほどの丘陵地です。分布しているのは、ヤブツバキクラス域に生育する暖温帯の植物がほとんどですが、冷温帯に分布するヤマコウバシ、アワブキなども若干あります。 榛原町の石雲院に、この地域を代表する極相林のミミズバイ−スダジイ群集があります。その他の地域には二次林のスダジイ萌芽林、コナラ林、アカマツ林、スギ・ヒノキ植林、モウソウチク林などがあります。 石雲院でこの地域の極相林の構成をみると次のようです。 常緑広葉樹 スダジイ、ミミズバイ、クロバイ、タブノキ、ヤマモモ、ヤブツバキ、クスノキ、クロガネモチ、タイミンタチバナ、クチナシ、ネズミモチ、トキワガキ、カクレミノ、ナナミノキ、モッコク、シキミ、サカキ、ヒサカキ、イズセンリョウなど 落葉広葉樹 ガマズミ、コバノガマズミ、リョウブ、ムラサキシキブ、ヤブムラサキ、ヤマウルシなど つる植物 キヅタ、テイカカズラ、クズ、イタビカズラなど 草 本 ハナミョウガ、コクラン、スズカカンアオイ、ナガバジャノヒゲなど また、この地域に特筆される植物として、 木 本 ヤマビワ、ナナミノキ、カンザブロウノキ、カナメモチ、ルリミノキ、トキワガキ つる植物 キダチニンドウ 草 本 クサナギオゴケ、クマガイソウ、ナギラン、エビネ、タコノアシ、フジタイゲキ、クロヤツシロラン、タシロラン、ハルザキヤツシロラン などがあります。 静岡空港では、工事で失われる貴重な植物の保全と共に、この地域の自然林を郷土種で復元するために、地元で種子を採取してポット苗を育て、現在、50種、7万本を確保しているとのことです。今後も年次計画で増殖し、完成のり面に順次植えていく計画で、平成13年度はこの苗木8000本を、のり面0.8ヘクタールに植栽するとのことです。 今まで、どこで採取したか産地不詳の苗木を大量にのり面に植えたり、外国産種子の吹き付けをするのが一般的で、そのために生ずる分布の攪乱や遺伝子汚染が心配されていました。静岡空港のように、郷土種を独自の施設で育苗して利用することは画期的なことです。大規模のものとしては、日本で初めての試みではないでしょうか。 |