追悼文
寺田 徹さんを偲んで
(平成12年10月19日 ご逝去 65歳)

発行:2000/12/05

三宅 隆(日本野鳥の会静岡支部)


寺田 徹さん 寺田さんは、自然史博推進協設立当時からの会員で、一時は監事も務めてくださった方です。県内の数少ない貝類研究者として、長年に渡り、特に駿河湾の貝の収集をされていました。休みの日には、海岸を歩いたり、魚市場や漁師さんを廻り、網に入った貝をゆずってもらったりして集めたそうです。そのコレクションの数は、2,000種15,000点にも上ります。

 これら収集した貝の中間報告として、1994年に「駿河湾の貝」を自費出版されました。さらに、昨年実施した「静岡県の自然 ミニ博物館」は、寺田さんの御好意で会場をお借りでき、無事開催できたのです。

 このように、推進協にとってはかけがえのない人でした。個人的ではありますが、私と寺田さんの付き合いは、私が静岡に来た昭和44年からで、もう30年以上になります。それも仕事上の付き合いではなく、もっぱら夜の飲み仲間でした。寺田さんの豪快な飲みっぷりは、夜の静岡、特に玄南通りではチョ−有名でした。振りかえってみますと、寺田さんとは酒の席以外でお会いすることはほとんどなかったくらいです。

 毎年、春の谷津山裏の寺田さんの家での花見は最高に楽しいものでした。一緒に出かけたパプアニューギニアもいい思い出として残っています。今度はマダガスカルに行こうと約束していましたが、叶わぬこととなってしまいました。報道関係だった寺田さんの幅広い交友関係で、多くの方を紹介していただき、私の友人も随分と増えました。これらの方々は、私の貴重な財産となっています。本当にありがとうがざいました。

 静岡県立自然史博物館の建設のめどがいまだたってない今、寺田さんを失ったことは、推進協にとってはとても大きい痛手です。寺田さんの集められた貴重な貝の標本はどうなってしまうのでしょうか? 

 前述の「駿河湾の貝」の出版の動機について、寺田さんは、この本の出版を思い立った目的の一つは「貝殻」について日頃考えていることを、日常的レベルで平易に紹介したいと考えたことと、もう一つは私のコレクションを管理展示してくれる寄贈先を、駿河湾岸の公的施設の中で探したいと思ったからですと言っておられます。できたら、県へ寄付していただき、保管して、将来県立自然史博物館でぜひ展示したいものです。それが、寺田さんの遺志を一番生かせる方法ではないでしょうか。

 私達は、今後共一刻も早い県立自然史博物館の建設を働きかけていきます。きっと寺田さんは好きだった貝になって駿河湾の海の底から見守ってくださるでしょう。


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登録日:2001年3月28日