第13回見学会の報告 静岡県水産試験場浜名湖分場周辺の 見学・観察会参加報告 |
発行:2000/12/05
板井隆彦(静岡淡水魚研究会会長)
9月15日静岡県自然史博物館推進協議会主催の標記の見学会が催された。会員以外の参加者を若干名含め、自家用車の相乗りで19名が参加した。当日は降雨の予想もあったが、幸いにもよく晴れ、暑い中での見学会となった。 最初の訪問は、静岡県水産試験場浜名湖分場の「浜名湖体験学習施設・ウオット」である。今年8月に舞阪町舞阪に移転した静岡県水産試験場浜名湖分場(以下たんに浜名湖分場という)に併設された施設で、水族館を謳ってはいないが、間違いなくミニ水族館である。当日は3連休の初日で天候もよく、家族連れで賑わっていた。当日は松原壮六郎館長に施設の設立の経緯や概要についてご説明いただいた。 施設は、中央に位置する「レイクシアター」でまず浜名湖の歴史を学び、周辺にめぐらされた水槽展示で浜名湖や都田川に生息する魚類等の生き物を学ぶしかけとなっている。また生き物に実際に手を触れて体験することのできる水槽も、屋内の「ふれあい水槽」のほか、屋外に「タッチプール」が設けられており、いずれも子供が集まっていた。 松原さんによると、このウオットは、浜名湖分場の施設ではあるが、管理運営は浜松商工会が行っている。職員は館長も含め4名とかなり少なく、魚の管理は実際上、浜名湖分場の職員の援助がなくてはできないであろうとのことであった。 しかしながら浜名湖分場は本来研究施設であり、以前からウナギやアユの養殖、魚病の研究が活発に行われてきている。したがって、親施設である浜名湖分場が、ウオットに恒常的に魚を供給し続けるために飼育栽培施設の一部を割くことはともかく、その職員の労力まで提供し続けることは困難と思われる。ウオットの専従職員がごく不足している現状では、展示が支障なく継続できるかどうかは危惧されるところである。 なお体験施設としては、ウオットの2階にやや小さいながら実験室が用意されており、学習の施設として一般に解放されている。浜名湖で標本を採集して、すぐ観察できる場所があることは、地の利を生かした学習ができる点でとくに優れている。ただし、一見したところでは、ウオットのすぐ近くで、浜辺に降りて採集ができるようなところが見あたらなかった。 ウオットを市民の学習施設としてその機能を発揮するためには、やはり職員の少なさが致命的となっていると言える。ふれあい水槽やタッチプールでは、職員が張り付いて、生き物のふれ方からその生態まで、解説したり質問に答えたりしてはじめて体験学習が成り立つが、現状では触れるだけの施設となっている。 なお、屋外にあるタッチプールであるが、やはり屋外にあっては冬季や雨天の利用が困難となるので、これも屋内の施設とすべきと思われた。また、現在のプールはコトヒキと思われる幼魚が多数はいっているだけであったが、浜名湖に隣接する地の利をよりよく生かし、貝類やヒトデ、ナマコ、カニ類なども加えてバラエティーに工夫すべきと思われた。 昼食後は、会員の青木さんのご案内で中之島で水鳥の観察を行った。潮はまだ十分に退いてはおらず、サヨリなどをねらう釣人で賑わっていたが、望遠鏡で覗くとわずかに浮き上がった干潟にカワウとウミネコが観察された。 この後は、「しずおか国際園芸博覧会」場の工事現場の見学を行った。工事を請け負っている杉山組の大石さんにつづき県庁企画部国際園芸博推進室長の守屋さんから工事の進め方、設計の基本方針などについて説明を受けた。 園芸博は静岡県の都市計画決定した事業で、都市公園としての整備を行い、西暦2004年に開催する予定とのことだった。質疑でわかったことだが、中央の池部分の水源の確保やレイアウトなど設計の基本的なところに未確定の部分が多く、参加した池谷さんや湯浅さんの質問もこのあたりに集中した。 筆者も、設計平面図の中央の池部分に、小川(これは後で滝との説明を受けた)や湿地など細々としたパーツが配置されているのを見て、次のような質問を行った。すなわち、設計者はレイアウトを考えるときにどのような魚等の生き物を入れるか考えていたはずである。 しかし、現在は池はできたものの放置状態である。これ以上池を放置したままにしておくと、ブラックバスなどの魚が放流されてしまい(すでにメダカが放たれている)、設計者が当初描いた構想の実現にとって、取り返しがつかなくなることのではないかというものである。 これらの質問に対しては明快な回答が得られなかったが、予定した時間が過ぎ、説明いただいた大石さん、守屋さんに謝辞を述べて博覧会場予定地をあとにした。この見学会はこのまま流れ解散となった。 |