特集「浜名湖の自然」 浜名湖 Birding Spot |
発行:2000/12/05
青木正男(日本野鳥の会遠江支部)
遠江地方の鳥相を特徴づける因子として、浜名湖の存在は大きい。浜名湖の姿は、随筆家大町桂月が、「浜名湖は湾入多く、ざっと形容すれば、手を広げたが如し、手首は今切なり、・・・・」と例えた様に、入りくんだ複雑な地形が多く、野鳥の休憩場所を提供している。又、湖の北側に注ぐ都田川河口付近では淡水に近く、南下するに従って塩分が増加して太平洋へと続く汽水湖のため、野鳥の種類も多く、一年を通して、バード・ウォッチングが楽しめる。今回は、遠江支部がよく探鳥会を開催する、行きつけのBirding Spotを紹介したい。 (1)細江湖 12月〜2月 浜名湖の奥まった一角を細江湖と呼んでいるが、ここは、水鳥、カモ類の県下最大の越冬地となっている。一万羽を越すスズガモの大群、その他、ホシハジロ、オカヨシガモ、キンクロハジロ、マガモ、ヒドリガモ、ヨシガモなどが多く、数万羽のカモ達が一斉に飛び立つ様は正に圧巻である。10月末になると、200羽前後のオオバンが終結したり、珍しいホオジロガモも毎年見つけることができる。しかし、数年前から始まった湖岸の開発により、越冬中のカモ類の分布が変化しつつあり、注意深く見守る必要がある。ここは鳥獣保護区に指定されていて、湖岸の遊歩道もよく整備されているので、家族連れで散策できるすばらしいSpotである。 (2)大草山 5月〜10月 アオバトがなぜ海水を飲むのかということは、不明な点が多いが、この習慣は昔から知られており、全国的には神奈川県の大磯の海岸が有名である。静岡県下では、由比の海岸のテトラポットの場所と、ここ大草山の2ヶ所だけではないだろうか。大草山の先端にある黒岩崎の岩礁に海水を飲みに集まるアオバトの群を至近距離で見られるのが最大の魅力である。現在、日本野鳥の会遠江支部では、ここのアオバトの生息状態を調査中であるが、以下簡単に今までの調査結果を述べて見たい。 アオバトは夜明けと共に、北側の尉ヶ峰方面より、数羽〜数十羽の群で飛来し、大草山や舘山寺の森に一旦休息してから、黒岩崎の海岸の岩に降り海水を飲む。午前8時頃がピークとなり、最大羽数は200羽前後、海水を飲んでからは、再び同じ方向に飛び去る。午後はほとんど飛来しない。夕方もう一回ピークがあるといわれるが、詳細は不明である。 最近はこの岩場が、釣人とバッティングし始めており、早急な対応が望まれている。いつまでも、アオバトの楽園として、ふる里の遺産として、残したい所である。 (3)篠原町の養鰻池 12月〜2月 温暖な気候でしかも養鰻池が多いためか、毎年少数の越冬ツバメが観察されている。特に腹の色が赤っぽい北方系亜種も混じっている点が興味深い。また佐鳴湖の水の汚れを嫌ったのかミコアイサもこの辺りに少数が移って来ているようだ。 (4)舞阪町吹上 一年中 カワウのコロニーがあり、夕方浜名湖近辺からねぐら入りし、夕陽をバックにして、「カワウのなる木」が出現する。東京でBandingされたカワウがここで再発見され、その広域性が判ってきている。養鰻池のウナギ、天竜川のアユなどの被害が報告され、その方面での研究対策が必要となっている。 (5)弁天島 春と秋の渡りのシーズン 浜名湖の南半分は砂地のため、ミユビシギなど砂質を好むシギ・チドリがよく見られる。ただ中洲までの距離が遠いため、舟で中洲まで渡らないとよく識別できないという難点がある。 |