県立自然史博物館早期設置の要望書 |
最終更新日:2001/03/10
平成12年(2000年) 8月、知事・副知事・企画部長に提出
私たちは平成13年度知事方針書が指摘する「経済のグローバル化やIT革命の進展により、大交流・大競争の時代が到来しようとする中、世界に誇れる快適で(文化的にも)魅力ある地域を形成していくことが重要である。」に賛意を表するとともに、「人や情報が集積する魅力ある地域づくりを目指し、地域の中から世界的に価値あるものを創造し、情報発信する『本家・本元づくり』」の戦略的展開のために、さらにNPOやボランティアとの連携・協働を積極的に行政に取り入れ戦略的に政策を展開するという『コラボレーション』の観点から、『新世紀創造計画』に位置づけられている『自然系博物館の整備』の早期具体化を重ねて強く要望いたします。 私たちは「本県の豊かな自然の歴史と現状」や「多彩な動植物と人々の関わり」に関する情報(標本・資料)の収集整理・調査研究・情報処理・情報発信・学習交流が可能な快適空間の拠点機関として、「県立自然史博物館」が一日も早く実現できますよう切望し、平成11年4月提案書「静岡県立自然史博物館基本構想」(第三次案)を基本とし、以下の諸点に配慮した施策概要を取り纏められるよう強く要望いたします。 本県は世界に誇る秀峰「富士」をはじめ、プレート運動に伴って最近日本列島に衝突・付加した「伊豆」、プレート運動によって褶曲・隆起した「赤石山地」などの山地・丘陵、これらを刻む河川と海面の変動によって生れた三方原・磐田原・牧の原などの台地や遠州・志太・静清・岳南などの諸平野のほか、屈曲した湖岸線の美しい「浜名湖」など、実に多様な自然に恵まれており、それぞれの環境に適応した多彩な動植物を誇っています。さらに県土の南には黒潮洗う「遠州灘」が広がる一方、プレートの沈み込みによって急深な「駿河湾」が形成され、多様な海洋環境を生み出しています。 しかしながら、本県の多様な自然の生い立ちや環境変遷、環境に適応して進化を遂げた多彩な動植物の変遷を裏づける自然環境情報(標本・資料)は、現状では一元的に集約されておりません。県内外に散在するこれらの自然環境情報を精力的に収集整理・調査研究し、情報処理することは「新たな文化の創造」にほかならず、これらの新文化を積極的に情報発信し、国内外の人々と「自然との調和や共生」について学習・交流を深め、21世紀の地球人として主体的に活動できる「快適空間と拠点機関」(収集整理・調査研究・情報処理・情報発信・学習交流機能を持った中核センター、情報ネットで結ばれた複数の地域交流・活動センター)が必要不可欠です。この視点に立った施策概要の取り纏めを強く要望いたします。 (1) 自然史博物館基本構想の早期策定 私たち県内民間研究団体・個人有志は「県立自然史博物館設立推進協議会」(自然博推進協)を1995年5月に結成し、他府県の自然史系博物館の見学・調査(10回)、講演会・総会(各5回)、討論会(1回)を行なうほか、これまでに県知事(または企画部長)に要望書を2回、提案書を3回提出しました。 すなわち、平成7年5月には「静岡県に県立自然史博物館が絶対に必要である」という要望書・同解説書を、同年7月には県立自然史博物館に関する提案書(第一次基本構想案)を県知事に提出しました。幸いにも私たちの願いが認められ、「新世紀創造計画」の第4章「未来を創る人と文化」のなかに「本県の特性を生かし、学術文化の振興の核となる、自然系博物館の整備を進めます」が位置づけられ、翌8年度当初予算には1,000万円の基本構想検討費が計上され、基本構想素案検討のための基礎調査が行われました。 平成8年4月には要望書「静岡県立自然系博物館の整備について」を県知事に、翌9年1月には「県立自然史博物館基本構想の早期策定についての提案書」を杉山直哉企画部長に提出しました。平成9年度県当初予算にも引き続き基本構想検討事業費1,000万円が計上されましたが、県財政逼迫を理由とした諸事業の見直しに関連して「自然系博物館の整備」は先送りされ、基本構想の策定は具体化されないまま現在に至っています。 こうした状況を踏まえ、私たちは平成11年4月に「自然史博物館設置についての提案書〜静岡県立自然史博物館基本構想(第三次案)〜」を県知事および鈴木雅近企画部長に提出し、厳しい財政状況のもとでの修正提案(二段階整備案)を行ない、その第[節「博物館設置にむけて」のなかで、博物館設置は基本構想策定から最低6〜7年の準備期間が必要なことを指摘し、「基本構想の速やかな策定」を第一に掲げました。基本構想の策定自体は大きな財政負担を伴うものではありませんので、私たちの第三次案などを参考にされ、早急に基本構想案を確定し、基本構想検討委員会に諮られるよう強く要望したします。 (2) 自然史博物館設立準備室の設置 私たちは県知事(または企画部長)あての要望書・提案書の提出のほか、自然史系博物館関連情報を共有するための連絡誌「自然博推進協通信」を16号まで自費発行いたしました。さらに貴部局で取り組み中の県内自然環境情報の所在調査やその評価にも関わり、昨年8月には貴部局のご協力を頂きながらミニ博物館「しずおかの自然」(静岡市:朝日テレビ青葉ビル)の一般公開(7日間)と関連野外観察会(5回)」を実施し、本年度はガイドブック「しずおかの自然」を発行する予定で現在原稿を依頼中です。 これらの活動は「新世紀創造計画」に「自然系博物館の整備」を位置づけられた県当局が庁内に設立準備室をまず設置し、関連団体・個人との協働で進めるのが本来のあるべき姿だと考えます。この設立準備室を一刻も早く設置し、ここに自然史系博物館の実務経験(資料収集・調査研究・情報処理・展示広報・学習交流など)を持ち、開館の暁には博物館の中核となり得る若干名の人材(専門分野に配慮)の登用・配置がなされるよう強く要望いたします。 (3) 自然環境情報の整理・保存・データベース化の場の確保 多様な自然に恵まれた本県の自然環境情報は多岐に亘り、所有形態も様々です。基本構想の具体化のためには、県内外の国公立機関や民間企業・団体・個人がどのような自然環境情報を所有しているのか、県外から収集すべき情報は何か、それらはどこにあり誰が所有しているのか、といった基本調査を行なうとともに、民間篤学者が所有する自然環境情報の実状把握と保存処理・情報処理が緊急に必要です。 私たちが行なったごく限られた調査でも、主として民間篤学者の50万点を越える自然環境情報が把握されており、それらのなかには池谷微化石・図書、板井淡水魚、茨木微化石、伊藤植物、伊藤岩石・化石・図書、大村植物・図書、小山火山、沢田海藻、志村シダ、杉野植物、故杉本植物、杉山昆虫、柴 岩石・鉱物・化石、高橋昆虫、土 化石貝類・現世貝類、寺田貝類、長島岩石・鉱物・化石、三宅鳥類、湯浅植物、和田岩石・鉱物・植物遺体などがあり、未把握の自然環境情報は膨大な量になると推測されます。これらの自然環境情報は刻々と県外に流出しており、天災・人災などで逸失する危険性もあります。 とりわけ憂慮される高齢民間篤学者の標本・資料を責任を持って保管するとともに、適切な保存処理・情報処理(データベース化)を行なうことは県内文化財の保全及び自然環境情報の共有化の観点からも緊急の課題です。そのために必要な耐震・耐火・空調・情報処理機能を持った自然環境情報保管・処理室の確保を強く要望いたします。こうした自然環境情報保管・処理室が確保され、適切な管理者が配置されるならば、民間研究団体・個人(ボランティア)との協力・協働のもと、自然環境情報の収集・整備・保管・情報処理など、自然史博物館設立に向けた準備作業が飛躍的に前進するものと確信いたします。 石川嘉延知事は本年10月に予定されている三役協議の結果、協議の整ったものについては平成13年度当初予算及び組織・定数の編成作業において重点的に取り組む方針と伺っておりますので、私たちの要望する「県立自然史博物館の早期設立」が重点施策として採択されることを悲願として擱筆いたします。 topへもどる |