日本学術会議が声明
「博物館の危機をのりこえるために」を公表

最終更新日:2007年9月19日



 国及び地方自治体の財政赤字拡大に端を発する平成15 年地方自治法の一部改正や公共サービス改革法により、平成18年度にはすでに29%以上の国公立の博物館がいわゆる指定管理者制度を導入している。このような博物館を取り巻く状況に鑑み、日本学術会議は、学術・芸術・文化の蓄積・普及装置としての国公立の博物館が、その機能充実を目的とした改革ではなく、財政および経済効率を優先する改革に影響されて、社会的役割と機能を十分に発揮できない状況に陥る可能性があることを憂慮して、平成19年(2007年)5月24日に声明「博物館の危機をのりこえるために」を公表した。

 博物館とは歴史、芸術、民俗、産業、自然科学等に関する資料を収集、保管、調査研究、展示し、また教育的配慮をもって市民・公衆の教養、調査研究、レクリエーション等に資するために必要な事業を行う機関である。公立の博物館では、近年の指定管理者制度の導入によって短期的には「より良質かつ低廉な」博物館サービスが試行されている一方で、長期的にみた事業運営上の弊害や潜在的危険性が浮上している。また、指定管理者への短期間の業務委託は、博物館の基盤業務である長期的展望にもとづく資料の収集、保管、調査をおろそかにする傾向を招き、その基盤業務を担う学芸員の確保と人材育成が危ぶまれる状況を招いている。

 博物館に託された役割と機能は、高い学術・芸術的価値と時間的価値を集積した実物資料の保存、継承、活用にある。博物館は、広く国民に対し、資料をできる限り適切な環境で公開し、その価値をわかりやすく示し、これらを確実に次世代に伝えることが期待されている。このため博物館には将来を見据えた中・長期的計画が不可欠であるが、同時に時代の変化に慎重かつ的確に対応する柔軟性も不可欠である。

 公立博物館が、指定管理者制度の適用を受けるのであれば、博物館の役割と機能に加えて作業の質の維持及び作業の継続性が担保される必要がある。

 報告全文は、日本学術会議ホームページの以下のURLで御覧いただけます。
 http://www.scj.go.jp/ja/info/kohyo/pdf/kohyo-20-s6.pdf

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登録日:2007年9月19日


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