カラーコラム


最終更新日:2007年9月20日






静岡県の地質(2)

大崩海岸で見られるかつての海底火山噴火

柴 正博
 高草山から大崩海岸にかけての地域には、今から約1,500万年前には深い海底でしたが、そこに噴火した玄武岩の溶岩がおもに分布しています。これらの玄武岩は、アルカリ成分(ナトリウムとカリウム)を多くふくむことから、アルカリ玄武岩と呼ばれます。アルカリ玄武岩は、大陸では普通に見られる岩石ですが、本州の太平洋側ではこの付近にしかなく、またこの岩石にはガスのぬけた小さな穴に沸石やメノウなどの鉱物も見られます。

 大崩海岸の海岸の崖では、直径50cm〜1mの丸い形の岩石がつみ重ったような模様が見られます。この岩石は玄武岩の溶岩で、枕をつみ重ねたようなに見えることから、枕状溶岩と呼ばれます。玄武岩のようにねばりけの少ない流れやすい溶岩が海底などに流れて海水と接して急に冷えた時には、表面積を小さくするように丸くちぢむため、ひとつのかたまりが枕や俵のような形になります。溶岩が海水と接する表面は急冷するため、丸い輪郭のいちばん外側にガラスの層ができます。この枕の断面の丸の中心からは、溶岩が冷えるときにできた放射状の割れ目も見られます。

 焼津市の浜当目海岸の崖に見られる枕状溶岩の岩石は、岩石の中に四角い斑点のような結晶(斑晶)が目立ちます。また、枕と枕の間にはそれをうめる岩石があり、この岩石には斑晶が目立ちません。この岩石も玄武岩ですが、斑晶のめだつ玄武岩とは成分が違っていて、斑晶のめだつ玄武岩の枕状溶岩が流れたあとに、斑晶が目立たない岩石のマグマが地下から上昇してきて、その枕と枕との間を通ったことがわかります。また、同じ崖にはその岩石からなる岩脈もいくつも見られます。

 浜当目海岸の虚空蔵山の山頂やその北側の小浜では、この岩脈の岩石と同じ斑晶の目立たない玄武岩の枕状溶岩が広く分布しています。このことから、この岩石をつくったマグマがすでにあった海底火山の下から溢れるように湧き出してきて、海底に噴出して次々と海底に枕状溶岩をつくりあげていったと考えられます。小浜の海岸の崖では、その激しい海底噴火のようすが、1,500万年を超えた現在でも容易に想像しながら観察できます。


静岡県の鳥(4)

ノビタキ

三宅 隆
 黒いマスクに翼の白い斑、「フィーフィーチョ、チョチョリリ」と低木の上で鳴きながら、低い草丈の草原を飛び回るスズメより少し小さな小鳥。それがノビタキです。夏鳥として、日本に渡来し、秋には南の国に渡り冬を越す渡り鳥です。北海道では平地の草原でも繁殖しますが、本州では主に高原と言われる場所で繁殖します。静岡県内では富士山麓の、朝霧高原や東富士演習場などに生息し、秋の渡りの時期には、平地でも見られます。

 朝霧高原は、県内唯一と言ってもいいくらいのノビタキの重要な繁殖地です。数十年前は草原のいたるところで観察され、高原の探鳥会の主役として、たくさん見られたものでした。しかし時代と共に、平原の開発、植林による森林化、野焼きの中止による植層の変化などで、ここで見られるノビタキは激減しています。朝霧の草原は、昔から人が新しい芽をだすために野焼きをし、焼却に強いカシワの木が残る特殊な草原です。つまりある程度人の管理の入った草原で、そこに適応したのがノビタキなのです。

1昨年、朝霧道の駅周辺で、バードウォッチングをした時には、それでも数番は見られたのですが、今回はついに見つけることができませんでした。他の数箇所も行って見ましたが、姿はありませんでした。さらに、高原性の鳥と言われる、アカモズ、コヨシキリ、ホオアカなども減少していますし、大空をすごい音を響かせて飛び回る、カミナリシギとも言われるオオジシギなどは、私はもう何年もその姿を見ていません。

人も生活をしなければなりません。しかしあの多くの朝霧高原を通り過ぎる多くの車やバイクの騒音を目にしていると、人はどこまで自然を破壊していくのだろうと考えざるを得ません。

 人が故郷を懐かしむように、ノビタキにも帰ってくる場所をいつまでも用意してあげたらと願っています。



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登録日:2007年9月18日


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Network for Shizuoka Prefecture Museum of Natural History