見学会報告
長野県環境保全研究所飯綱庁舎
(旧自然保護研究所)と戸隠森林植物園

土屋たかみ


最終更新日:2005年9月25日


環境保全研究所飯綱庁舎の外観 入口ホール
植物標本とその保管庫 標本収蔵庫 標本整理室

 9月3日(金)、残暑厳しい静岡をあとにして、一路長野市にある長野県環境保全研究所飯綱庁舎の視察に向いました。

 今後の自然史博物館設置推進にあたり自然環境研究所としての役割も考慮したく、長野県の自然について調査、研究をしている当研究所が視察先として選出されました。

 平成16年4月、組織変更により平成8年(1966)年長野市飯綱高原に発足した「自然保護研究所」は、昭和23年(1948)年衛生研究所として発足し昭和45年(1970)年に公害センターと合併した「衛生公害研究所」と統合され、「環境保全研究所」となりました。それぞれ所在地から自然保護研究所は「飯綱庁舎」、衛生公害研究所は「安茂里庁舎」となりました。

 長野市街から車で40分、対向車も少なくなり長野オリンピックのボブスレー・リュージュ会場を左手に見ながら進むと、道路下にブナ・ミズナラに囲まれた敷地面積15haの中、左右対称の2階建ての建物(延床面積約3,100u)が見えてきました。近くに飯綱高原スキー場があり、外気はさらりとしていて気持ち好く24度の外気温が体感では2度位低く感じられました。

 道路から続く2階部分は、エントランスホールを中心に220名収容の大会議室、事務室、相談室、自由研究室、学習・交流室、床から天井までの固定された棚がずらりと並ぶ書庫、閲覧室等公開され自由に利用するここができるスペースがありました。一階部分は、研究室(各研究員のスペースがパーテーションで仕切られている大きな部屋)、実験室・機器分析室、標本室、収蔵庫等がありました。

 主任研究員の岸元良輔さんから、発足から現在に至るまでの経緯・研究所の組織構成等の説明、案内をしていただきました。岸元研究員は、飯田市美術博物館の学芸員でしたが、研究所準備委員会当初から設立に関わった方です。

 長野リンピック開催にあたり自然との共存の為、生態系中心の調査・研究により県の自然保護を主要目的として設立され、現在も「自然と人との共生をめざして」を掲げ、研究・情報管理・学習交流・標本室管理を主な活動としています。スタッフは、8年間で大きな変動はなく所長、次長、及び研究員13名(嘱託員1名を含む)で、研究員は、当初公募により選出された専門家です。

 専門は以下のとおりです。
 植物生態(植物分類地理学)、哺乳類生態(哺乳類生態学)、地形・地質(地質学)、環境学習(霊長類行動学・生態学)、鳥類生態(鳥類生態学)、昆虫生態(ハナバチ類の行動生態学・群集生態学)、陸水生態(魚類生態学)、自然地理(都市気候学)、高山生態(植物生態学)、景観生態(保全生態学・緑化工学・環境計画科学)、人文・社会(文化地理学)(地域計画学)、植物分類・植物標本管理(植物分類学)。

 調査研究の他、自然ふれあい講座開催(年14回、研究員1人年1回)、年100回以上の出前講座開催、ニューズレター発行(年4回)、紀要発行(年1回)、長野県版レッドデータブックの発行等を実施しています。2階エントランスホールにおいては、各研究員が専門分野を小学生からわかるような展示をしており、さながらミニ博物館のようでした。
設立から8年が経過し、研究所のおかれている社会的・経済的環境も変化し、4月の統合からまだ落ち着いていないこと、最近は特に社会的有用性を強く求められるようになったとの話もありましたが、少ない研究費で多くの活動や実績を挙げていることに感心いたしました。

 また、植物標本については維管束植物とミズゴケ類の標本が約16万点、空調設備の整った部屋に保管され国際分類学連合が管理する“Index Herbaioruum”に登録され、基準標本も15種含み整理・保管に成果を挙げていました。
また、建物の説明の中で、先に行政側の建物設計が進んだ経緯により研究員の使い勝手が考慮されず、使いにくい部分が多いとの話もありました。

 冬には積雪1mにもなる研究所を後にして、戸隠「だいだらぼっち小屋」へ向かいました。マツムシソウが咲くシラカバ林の中、ゴジュウカラ、サンショウクイの野鳥が見られました。

 翌朝8時に宿を出発し、戸隠森林植物園に向かいました。途中車に当たったとみられるニホンリスを見つけ、胸の痛む思いでした。植物園の中では、入り口にツキノワグマが目撃されているので注意を喚起する看板を見たのですが、なんと「水芭蕉のこみち」付近で子グマが、草の根元や木の実を食べているのに出会いました。そのうちに木道に上がってきた子グマは、後ろ足がふらついて体力がないように見えました。周囲には母グマは見られず、生後2年位のクマのようでした。最初は恐る恐るカメラのシャッターを押しながら、そのうちにいい構図になるように何回もシャッターをきりました。

 森林植物園では、アカゲラ、オオタカなどの野鳥が見られ、サラシナショウマの白い花、タチアザミ、リンドウ、ヤマトリカブトなどのそれぞれの紫色の花、シオカラトンボ、カラスアゲハなど豊かな自然に出会い、また訪ねたいと思いました。

自然史しずおか第7号の目次

自然史しずおかのindexにもどる

Homeにもどる

登録日:2005年9月25日


NPO 静岡県自然史博物館ネットワーク
spmnh.jp
Network for Shizuoka Prefecture Museum of Natural History