浜名湖花博の標本保存を終えて 杉野 孝雄 |
浜名湖花博は10月11日、500万人余の入場者を迎えて終園した。会場は公園として残るが、植えられていた世界各国の植物や園芸植物が、花博が終ると共に失われるのではなく、園芸研究の基礎資料として残るようにしたいと始められた、「浜名湖花博出展植物保存事業」も目的を達成して終了した。 標本作成の現地での作業は8人で81日かかった。標本の採取は協会の職員に立ち会ってもらうため随時行うのではなく、日を決めて1度に100種類、500点を目標に10回採取し、会場内の作業所で7〜8日かけて作成した。また、採取時間は花博の入場者に配慮して、早朝開園前に行った。 標本は博物館などで一般的に作成される、新聞紙半折に収まる程度の大きさで、一部は台紙に貼り残りは新聞紙にはさみ、茶箱に入れ保管してある。作成標本数は一覧表にまとめられていて、1,029種類、4,510点である。百華園に展示されている植物を中心に、主な植物を園芸品種より、園芸に使われている種に重点を置き収集されている。オ−ストラリアバオバブや変化アサガオの花も標本にしてある。作業が始められたのが5月下旬であったため、春の植物の収集が十分に出来なかったのは心残りである。 本格的な設備での標本の作成ではないので、器具などはすべて工夫しての自己作成、乾燥紙は新聞紙を20頁束ねたのを使い、天日で乾燥させるため紐をつけ、物干台で一度に多数が干せるようにして繰り返し使用した。乾燥器はふとん乾燥器を改良したのを使い、段ボ−ルの間に標本をはさみ、板でおさえゴム紐で止めて乾燥した。 苦労したのは雨で、今年は台風がたびたび来襲し雨天の日が多かった。乾燥紙は天日で乾燥するので雨が降ると干せず、また、干している途中で雨が降りだし大急ぎで取り込むこともあった。雨天が続くと止むをえず室内に干すが十分に乾燥せず、標本の出来栄えにも影響した。多い時は1,200枚ほどの乾燥紙を6本の物干竿に一度に干した。 会場の植物は次々と計画的に新しい植物に植え替えられ、何度訪れてもその度に新しい植物に出会えるように努力されていた。植えられる植物のほとんどは、静岡県内で生産された園芸植物で、静岡県が全国に誇れる園芸植物の生産県であることを改めて認識させられた。植え替えのスピ−ドはすさまじく、採取した植物の名前を2〜3日して再確認に行くと、すでに植え替えられていたことが度々あった。従って、植物採取は次々と行う必要があり、標本作成は植え替えと追かけっこをしていた。 作成された標本は利用して価値が出るものである。この標本が恒久的に教育や研究用に公開され、それが利用されることで、浜名湖花博の催が一過性のものではなく、後世に残る事業になることを期待している。 最後になりましたが、この事業に当たり静岡県企画部並びに静岡国際園芸博覧会協会、常時お世話いただいたガ−デンパ−ク建設室の本間義之主査、協会の成澤義美課長に感謝を申し上げる。 |
自然史しずおか第7号の目次 自然史しずおかのindexにもどる Homeにもどる 登録日:2005年9月25日 NPO 静岡県自然史博物館ネットワーク spmnh.jp Network for Shizuoka Prefecture Museum of Natural History |