静岡県の三角点(1)
地図の基準、三角点の今昔


輿石邦昭


最終更新日:2004年9月21日



 いかなるものでも、それを正確に表示するには、まず基準となるものを設定しなければならない。地図の場合はどこを基準にするのか。江戸時代、伊能忠敬が実測によって日本列島の輪郭を描いた時、その基準点をどこにおいたのだろうか。

 日本における近代的な地図の作成は明治の初めに着手された。まずはじめに、見通しの良い地点を選んで全国を大きな三角網で覆い、天文観測によって定めた日本経緯度原点(東京都港区麻布台の旧東京天文台構内:東経139度44分40秒5020、北緯35度39分17秒5148)を出発点として、各三角点の経緯度が精密に測られた。

 この基本的な骨組となる三角点は、一等(辺長約45 km)、二等(辺長約8 km)、三等(約4 km)、四等、五等と順次網目を密にしながら定められていったのである。現在、一等三角点は全国に972点、静岡県内には18点ある。三角点の標石は花崗岩でできた角柱で、その上面に刻まれた+印の中心が水平位置(経緯度)と高さを示している。

 また、標石は「○等三角点」と刻まれた側面が原則として南を向くように埋設されている。各三角点の標高は日本水準原点(東京都千代田区永田町1-1、国会前庭の旧陸地測量部構内)を基準(東京湾の平均海面:24.4140 m)としている。水準点(標石あるいは金属標)は一〜三等まであり、全国の国道や主要地方道沿いに約2 kmの間隔で設置されている。

 最近では測量技術の進歩によって、三角測量でなく、三辺を同時に測る三辺測量とGPS測量が主流となり、より敏速に精密な測量ができるようになった。人工衛星を使った精密なGPS測量によって世界各国は統一され、国際標準座標として新しい位置基準(測地成果2000)が平成14年4月1日に改正された。それによって、日本の経緯度原点は、経度で11.6261秒減り、緯度で11.6388秒増えたことになる。さらに、GPS測量による電子基準点は地殻変動による測量の基準点として利用されている。全国では1,224点、内静岡県には67設置されている。

 三角点の多くは山頂に埋設されており、特に一等三角点は精密測地網の基準点としてその位置がGPS観測によって精密に求められており、繰り返し測量を行うことによって、地殻の変動量が調べられている。このように三角点は地図作製の基点として、また地殻変動の激しい日本列島の測量原点として重要な役割を果たしている。

 これらの三角点はいずれも四方見晴らしのよい山頂付近に設置されているので、登山で山頂を極めた時、周囲の風景を眺めると共に三角点の所在を確かめ、その役割を知ってほしいと思う。以降、本冊子に静岡県内の18の三角点とその周囲の自然を順次紹介したいと思う。



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登録日:2004年9月21日


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