浜名湖花博出展標本の保存事業のようす

北野 忠・森 義之


最終更新日:2004年9月21日


浜名湖花博の会場ゲート 花博会場にある水路

 前号でもお伝えしましたように、現在開催中のしずおか国際園芸博覧会/第21回全国都市緑化フェア浜名湖花博に出展中の植物標本を保存・収集する事業が、杉野孝雄先生を中心につづけられています。この保存事業を行う価値として、杉野先生は以下のことをあげられました。

1. オーストラリア産の植物など、通常入手が困難な世界中の植物の標本入手が可能である。
2. 日本ではこれまで目にすることができなかった園芸種の標本の作成が可能である。
 花博開催期間中、1サイクル8日間で10サイクルの標本作成作業を行う予定で、取材に伺った8月19日は7サイクル目の終盤でした。期間中に4,000点程度の標本を作成するという契約のため、1サイクルあたり100種500点の目標で標本を作成しているそうです。

 標本作成は、会場にある植物の採取から始まりますが、まず各出展者の了解を得た後に、開催時間である午前9時30分よりも前に済ませてしまわないといけないという苦労があるそうです。その後の標本作成手順は以下の通りです。

標本を新聞紙にはさむ作業 ふとん乾燥機でつくった標本乾燥機
新聞紙にはさみ標本を乾燥させる 湿った新聞紙を干して乾燥させる

【標本の作成】 採取時に標本に荷札をつけ、仮番号と植物名、採取位置を記入する。→採取した植物をビニール袋に入れて保管する。→採取記録を整理する。→新聞紙半頁にはさむ。→下作りをする(大まかに形を整える)。→しわ伸ばしをする。→乾燥させる。

 このように箇条書きにすると簡単なように思えますが、ただ単に機械的に作業したのでは良い標本はできません。乾燥時には、植物の種類によっておもし石の重さや乾燥時間を変える必要があり、実にこまめな管理が必要です。また、標本の乾燥時にはさむ新聞紙は、毎日取り替えるために膨大な量を必要とします。そのため、一度使用した新聞紙を天日で乾燥させて何度も使うのですが、天気が悪いときに新聞紙の補充が間に合わなくならないようたいへん気を使うのだそうです。

完成した標本は、以下の作業を経て保管されます。

【標本の整理】 標本に通し番号をつける。→ラベルに必要事項を記入し、標本に添付する。→一覧表にまとめる。→紐でしばり、ビニール袋に入れる。→防虫剤を入れ保管する。

 なお、会場の浜名湖に面した一部には、自然観察園が設けられていました。園内には、1種のみは県外から持ち込まれた植物だそうですが、それ以外は浜名湖や遠州灘に自生する植物を集めたものであり、開催地である遠州地方の自然を反映させた園を設けるという試みは評価すべき点(杉野先生談)であるといえます。
 


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登録日:2004年9月21日


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