コスタリカを訪ねて


三宅 隆

最終更新日:2004年5月4日






 2003年暮れ、日本野鳥の会静岡支部の仲間と、中米コスタリカに行ってきました。

 目的は、もちろんケツァールを始めとする多くの野鳥を見ることですが、エコツアーの分野で世界をリードするコスタリカの現状を知ることにも、興味がありました。

 コスタリカはパナマ運河の上方に位置し、内戦などの危険地帯の多い中米には珍しく、非武装永世中立国として軍隊を保有しておらず、治安の安定している国です。産業は輸出がコーヒー位で、これといった産業のない地域です。しかし、豊かな自然を利用して観光を主体とした立国を目指しているのです。

 四国と九州を合わせた程の小さな国ですが、850種類もの鳥類が生息し、70を超える自然保護区や国立公園が、国土の約13%を占めているのは驚きです。今回、首都サンホセから南の高地に60kmほど行ったサンヘラルドと、太平洋側のカララ保護区の2ヶ所を訪れました。

 標高2500mにあるサンヘラルドは、熱帯雲霧林の中にあります。雲霧林は、霧に覆われることが多く、晴れていたかと思うと急に霧がかかってきます。朝夕は寒く、熱帯だというのにセーターが必要な位です。高木からはサルオガセがたれています。

 ここはケツァールが比較的容易に見られることで有名です。ケツァールは、和名カザリキヌバネドリ。大きさはハト位で、緑の金属光沢の羽、60cm位の長い尾を持った、不死鳥のモデルとも言える綺麗な鳥です。近隣国ガテマラの国鳥になっていますが、ガテマラでは、内戦などで生息地の破壊が続き、今では殆ど見られない幻の鳥となっています。

 このサンヘラルドは民有地ですが、釣りや、ケツァールを見に来る観光客のためにロッジなどの宿泊施設も完備しています。きちんとした知識と経験を持った鳥ガイドも充実しており、多くの野鳥を正確に教えてくれます。民有地と言うのは、一度開発が進むとそれを阻止することは難しいのですが、保護することがお金になることが判れば、かえって保護が進むようで、ここでも、ケツァールを目玉にするため、好物のアボガドの苗を植えるなど、積極的な保護活動を実施しているそうです。しかしケツァールだけ生き残れば良い訳ではなく、生息できる環境をいかに維持していくかが課題と思われます。

 カララは、海岸性のマングローブ林から熱帯雨林までの多様な環境を持った保護区です。保護区内はトレールが完備し、プロのエコツアーガイドの案内により安全に自然が堪能できます。トレールでは、時としてハナグマやペッカリーが横切り、樹上には多くの鳥たちが飛び交います。路上にはハキリアリが整列しながら移動しています。この森はまぎれもなく多様な生態系から成り立っていることを実感させてくれます。

 タラコレス川の船による自然観察も楽しいものでした。ワニの餌付けなど俗っぽい物もありましたが、多くの水鳥が見られて全員大喜びでした。

 今回、6日間の滞在で230種類もの鳥を見ることができました。日本国内では考えられない位の種類の多さに、この国の種の多様性を実感させられました。観光立国を目指すコスタリカですが、保護区や国立公園は別として、サンホセなどの市街地では、ゴミの散乱が目立ちます。国の政策と、一般国民の意識のギャップはまだまだ大きいようで、この意識改革がこれからの課題のように思えました。

 コスタリカは、日本からは地球の反対側に位置し、直行便もなく、遠く時間も経費もかかるため、まだまだ日本人の観光客は多くないようです。しかし今後、コスタリカの魅力的な自然を楽しむエコツアーは、もっともっと伸びそうに思えました。

コスタリカの野鳥
ケツアールのオス。撮影:打田 咲 オナガレンジャクモドキ
コスタリカノドジロフトオハチドリ


自然史しずおか第4号の目次

自然史しずおかのindexにもどる

Homeにもどる

登録日:2004年5月4日


NPO 静岡県自然史博物館ネットワーク
spmnh.jp
Network for Shizuoka Prefecture Museum of Natural History