ゴトランド島の化石

池谷 仙之

最終更新日:2004年1月2日


ゴトランド島の位置 ゴトランド島の地質図
 
 ゴトランド(Gotland)はスカンジナビア半島の南、バルト海に浮かぶスウェーデン領の小さな島である(図1)。その面積は3000km2ほどで、最高地が82mという平坦な丘からなる。

 島全体がシルル紀(Silurian)(約4億年前)の地層からなり(図2)、これらの地層は海岸沿いに20-30mの崖となって露出している(写真1)。この崖のいたるところに化石が包含され、また海岸には波によって洗われた化石が礫となって転がっている(写真2)。ここに行きさえすれば、どんな人でも何の苦労もなく、保存状態の極めてよいシルル紀を代表する化石をいくらでも手にすることができる。化石愛好家にとってはまさに夢の島である。

 筆者はこの島を「一生のうちに一度は行ってみたいところ」の筆頭に挙げながら、これまで果たせないでいた。ストックホルムから船だと一昼夜かかるが、「飛行機なら1時間足らずのところなのに」である。そしてついに今年夏、長年の念願を果たし、ゴトランド島での一週間にわたる化石採集を満喫してきた。ここに採集したいくつかの化石を紹介しよう。

 現在では、シルル紀はイギリスのウェールズ地方を模式地としているが、昔はシルル紀をゴトランド紀と呼んでいた。それは、ゴトランド島がシルル紀(約4000万年間)全体を代表するほぼ連続した地層を持ち、この時代を示す示準化石(海生無脊椎動物)のほとんどを産出するからであった。

 シルル紀は暖かく浅い海が汎世界的に広がり、サンゴ類や層孔虫類、コケムシ類、石灰藻類が礁を形成し、豊富な生物群が育まれた時代である。この造礁性石灰岩の中には腕足類や三葉虫類、貝形虫類、軟体動物や棘皮動物などの主として底生の生物が化石となって保存されている。

 ゴトランド島のシルル系はバルチック盾状地の上に堆積した地層で、カレドニア造山運動の影響が少なく、塊状の石灰岩や砂岩、礁性石灰岩や泥灰岩からなり、古くから多くの研究がなされ、これまでに350種を越える豊富な化石群が報告されている。日本では北上山地(大船渡市日頃市の樋口沢)や四国の佐川盆地(高知県横倉山)にハリシテス石灰岩が知られているが、標本としてあまり立派なものは採取できない。



ゴトランド島の露頭と化石

写真1:海岸の崖に露出する地層,写真2:海岸に礫としてころがる化石,写真3:ハチノスサンゴ(Favosites),写真4:密集化石塊(単体サンゴや腕足貝などを含む),写真5:a単体サンゴ(Palaeocyclus),b貝形虫(Hermannina),c腕足貝(FerganellaAtrypa),d三葉虫(Calymene),e単体サンゴ(Holophragma),写真6:腕足貝やコケムシ,ウミユリなどの破片が密集した石灰岩塊,写真7:クサリサンゴ(Halysites)


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登録日:2004年1月2日

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