コラム
街の中でみつけた化石

柴 正博(地学団体研究会静岡支部)

最終更新日:2004年1月2日


 1999年8月に、当時の自然史博物館推進協議会で「ミニ博物館」を開催しました。そのとき、「街の中の化石探検隊」という野外観察会を静岡駅周辺で行いました。この企画は、参加者も多くとても好評だったので、その続編ということで2つのスポットをご紹介します。

1 JR静岡駅パルシェ地下入口

ヌンムリテスの断面 JR静岡駅から地下へ降りる階段とエスカレータの下の壁、それに地下へ降りて右側のパルシェ地下入口には砂岩の石材が使われていて、その中にたくさんのとても小さな渦巻き状の化石が見られます。

 これら小さな渦巻き状のものは、ヌンムリテスという底生有孔虫の殻の断面です。ルーペで見ると、殻のまき方や隔壁がよく見えます。このヌンムリテスは新生代古第三紀始新世(約5000万年前)の示準化石のひとつです。

 ヌンムリテスという底生有孔虫は、今でいうと沖縄の海岸でみられる星砂(バキロジプシナという有孔虫)のようなものです。ヌンムリテスは、円盤状で直径が10センチ以上のものもあり、昔の人が使ったコイン(貨幣)のようだということから、「貨幣石」とよばれます。

 パルシェ地下入口には、向かって右側の壁にこの貨幣石(新生代古第三紀)、左の壁にはアンモナイト(おそらく白亜紀)、それと床にはルディスト化石(白亜紀後期)が見られます。

 床の大理石に見られるアルファベットのOやUのような形は中生代白亜紀に栄えた厚歯二枚貝のルディストとよばれる化石の断面です。この二枚貝は、ふたつきの下がつぼまったビールジョッキような形をしていて、厚い殻をして岩やお互いに固着し、浅い海に礁をつくっていました。殻内部にいくつもの空の小室をもったものが、後期白亜紀に世界的に栄えました。

2 グランシップ

ヌンムリテスの断面 ルディストと同じく中生代のサンゴ礁に栄えた軟体動物に、ネリネアという巻貝(腹足類)があります。貝殻の軸と口唇に突き出したひだをもち、殻の断面でみるとその形が特徴的です。
 この化石が、JR東静岡駅のグランシップの1階から2階へあがる階段と中ホール「大地」のロビーや階段にかけての壁の大理石中に多数発見できます。
 この大理石にはネリネアだけでなく、同じ時代のサンゴ礁の環境に生息していたイチエリアという巻貝やルディストの集合骨組み、カキの化石なども発見できます。
 ネリネアは全体に細長い形で、内部の構造は軸ひだが2本あり、外唇ひだと上唇ひだが各1本のタイプで、白亜紀のNeoptyxis 属の可能性があります。殻に空洞のないタイプのルディスト(厚歯二枚貝)の骨格群集があることからも、中期白亜紀(約1億年前)のサンゴ礁の石灰岩ではないかと考えられます。


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登録日:2003年1月2日

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