静岡昆虫同好会創立50年を記念して
「静岡県の蝶類分布目録」を出版

諏訪 哲夫

最終更新日:2003年10月28日


静岡昆虫同好会の歩み

 1953(昭和28)年5月、当時大学1年の高橋真弓さんが中心となって、郷土の昆虫相を開拓することを目的に、静岡昆虫同好会が創立されました。茶色に変色し、紙質が粗末なため触ればすぐに破けてしまう同会の会誌「駿河の昆虫」の創刊号をみると、連絡及び編集係高橋真弓、庶務係兼会計係細谷恵志、会員は総勢17名です。中学1年生の北條篤史さんらが最年少で、高校生と大学生がほぼ半数づつ、現在の会員構成とはまったく逆です。年会費は120円、入会金20円となっています。

 会誌「駿河の昆虫」は静岡県とその周辺地域についての投稿を原則として、長文の調査・研究報告と短報から構成されており、このスタイルは現在もまったく変わっていません。これまで報告された内容を10年ごと見るとそれぞれの時代の会員の関心事や特徴が現れており大変興味深いものがあります。1950年代は安倍川上流、南アルプス、富士山麓などの未調査地域の分布調査が精力的に行われました。また1955年突然大発生したクロコノマチョウの調査が極めて綿密に行われたのもこの時からです。

 1960年代は静岡県における詳しい調査がさらに続けられたのと平行して、山梨県の各地の調査も行われるようになりました。1970年代になるとギフチョウの食性の研究や蝶の訪花習性の調査のほか、キマダラヒカゲについては平地型・山地型といわれていたものが実はサトとヤマの2種であるとの新発見など、生態や分類の分野まで踏み込んだ高度な研究がなされました。

 1980年代ごろから蝶以外の甲虫、トンボなどの報告が多くなりました。ミドリシジミ類やスギタニルリシジミなどの詳細な分布調査も行われました。このころから草原性蝶類の減少が著しくなりましたが、逆に南に住むツマグロヒョウモン、ナガサキアゲハ、ムラサキツバメなどに関する報告が1990年代以降になって急増します。

 会員の郷土の昆虫相解明に向けての情熱とひたむきな気持ちに支えられて会誌は順調に発行されてきました。年4回発行、100ページのペースを何とか守って、記念すべき50年が経過し、200号、5,606ページとなりました。




「静岡県の蝶類分布目録」の発行

  同好会では1978年、創立25周年記念の事業の際には会誌100号に蝶類6種、蛾類・ヤガ科、カミキリ、ハチ、ショウジョウバエ、半翅目・セミ科、トンボ、直翅目について、これまでの分布調査結果等をまとめた総説を掲載しました。このときから25年が経過しましたが今度は50年の節目にふさわしいものとしてかねてから懸案でもあった“総データを整理すること”で「静岡県の蝶類分布目録」の出版が決定されました。

 しかし予算はどのくらいかかるか、データ入力にどのくらいの時間が必要か、内容をどうするかなど多くの問題がありましたが、会員をはじめ多くの方がたのアドバイスをいただきなんとか動き出したのが1998年でした。パソコンについての知識がまだほとんどない私は、機械の購入方法すらわからなく、入力をはじめとして取り扱いの基礎知識の習得にも苦労し、わからなくなっては電話で応援を求めることも何度かありましたが、4年ほどで何とかデータだけは入力を完了しました。総レコード数は45,865件でした。改めて会員の皆さんがよくこのように多くの原稿を投稿してくれたものだと感心した次第です。




「静岡県の蝶類分布目録」の内容

 この目録は次の4項目@現在はほとんど採集が困難な産地の歴史的標本のカラー写真 A種別分布調査データ B市町村別分布調査データ C種別分布図(分布の変動が著しい種は報告された静岡県の種類数は153種(迷蝶13種を含む)、山梨県145種(迷蝶1種を含む)、全部で161種、県別のレコード数は静岡県30,199、山梨県14,307、長野県816、愛知県253、神奈川県160、その他130となっています。

 静岡県の全市町村から記録はありますが、海岸平野部からの報告は迷蝶などごく限られたもののみとなっています。なお旧静岡市からのデータが最多で11,491件、次いで富士宮市4,031件です。

 参考にこの本の体裁はA4判、1、368ページ、上製箱入り、カラー図版2ページ、分布図249図、会員価格11,000円非会員価格13,000円(送料込み)となっております。もし、興味のある方は以下の連絡さきへご連絡ください

〒420-0815 静岡市上沓谷町14-9 諏訪哲夫
(Tel & Fax 054-247-6524)



蝶の風景
蝶の風景

          清 邦彦


 このたび「蝶の風景」(B6版約130ページ)を個人出版しました。十数年前から描きためた蝶や蝶に似合いそうな風景のペン画に文を添えたイラストエッセイです。

 ギフチョウや富士山麓の草原性蝶類についてのまとまった部分もありますが、他は、チョウの雑学、人と自然のとの共存、自然教育など、さまざまなことについての思いを短い文で表したものです。郵送料を含め900円(手渡しで700円)です。

 ご希望の方は下記口座に郵便振替でご入金くださればお送りいたします。

郵便振替口座 00890-1-52237 清 邦彦





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登録日:2003年10月28日


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